木下アカデミーに移籍

2024年3月24日、世界選手権エキシビジョンで演技する吉田陽菜 写真=Raniero Corbelletti/アフロ

 復帰した吉田はジュニアに移行した中学2年生のとき、全日本ジュニア選手権で3位となり全日本選手権にも推薦で出場。

 中学3年生になると1つの決断をする。慣れ親しんだ名古屋市内のクラブを離れ、木下アカデミーに移ることだった。

「すごい悩んで、簡単にできる決断ではなかったです。でも濱田(美栄)先生に教えていただきたいと思いました。濱田先生は紀平梨花選手や他のトップの選手も育てていたので、お話させていただきました。そうしたらたまたま木下アカデミーができるときで、『おいで』って言ってくださいました。タイミングがよくて、このタイミングしかなかったんだなって思います」

 その指導をこう語る。

「濱田先生はほんとうに選手思いで、厳しいときはあるかもしれないんですけど、みんなが上手くなるためにいろいろ考えてくださっているので、信頼しています」

 願っていた指導を受け、木下アカデミーでチームメイトとともに切磋琢磨しながら練習に励んできた。その結果として昨シーズンの飛躍がある。

 活躍する舞台が広がれば、思い描く未来が変化していく、あるいは明確になってくる。2年後にはミラノ・コルティナオリンピックが控える時期だ。だが吉田は言う。

「正直、オリンピックは今はまだ手が届かないところにあると思います。でもシニアのデビューシーズンで世界選手権の代表にも選んでいただけたので、今この位置にいられることに感謝して、ここから2年もないですけれど、自分ができるすべてを出し切りたいなと思います」

 そしてこう語る。

「とても頑固なところがあり、最後まであきらめずに全力を尽くすというところは、しっかりぶれずに自分の中にあるのかなって思います。(客観的に見た自分自身は)すごい難しいですけど、ジャンプ以外で自分の中にあるものとして、周りに惑わされず自分の気持ちや思いをぶれずに持ち続けて挑戦し続けられるところが強みだと思います。最後まで挑戦を貫いて、みなさんに勇気を与えられる存在になれたらいいなと思います」

 では自身が勇気をもらった選手は? するとスケーターの名前をあげた。

「たくさんいるので絞るのは難しいんですけれど、先日引退を発表された宇野昌磨選手と一緒に練習する機会が何回かありました。練習する姿には圧倒されましたし、試合に向かう姿も尊敬していたので、すごい勇気をもらいました。

 ネイサン・チェン選手は学業とスケートを両立されていたのでほんとうに尊敬していますし、理想像というか、少しでも近づけたらいいなと思います」

 今日までの足取りを振り返れば、インターナショナルスクールに通わせてもらったこと、木下アカデミーに移ったこと、自身の選択か否かにかかわらず、その場所を、機会を無駄にすることなくいかしてきたことが分かる。その都度「全力を尽くした」結果だろう。

 そんな吉田には思い描く将来がある。

「現役を引退した後は、ISU(国際スケート連盟)の方々のようにグローバルに活躍したいなって勝手に思い描いています」

 そこに至る過程でもきっと、全力を尽くして歩んでいくだろう。

 まずは新しいシーズンへと目を向ける。

「昨シーズンは初めての経験がたくさんあって、シーズン通しての結果が世界選手権に結びついたのが何よりもうれしかったです。でも自分に足りないものもたくさんあったので、学んだことをいかして来シーズンも頑張りたいと思います」