兄は、紫式部の恋の相手?

月岡芳年「藤原保昌月下弄笛図」盗賊の「袴垂」が笛を吹いている藤原保昌に襲い掛かろうとするが、保昌の人を寄せ付けない気配により動けない様子を描く

 最後に、保輔の兄・藤原保昌を取り上げたい。

 保昌は天徳2年(958)に生まれたとされる。家司として仕えた道長は康保3年(966)生まれなので、保昌のほうが8歳年上である。

 保昌は武人として名高く、『尊卑分脈』にも「勇士武略之長」と称されている。

 道長にとって保昌は、かけがいのない存在であったようである。

 鎌倉中期の説話集『十訓抄』に、「頼信、保昌、維衡、致頼とて、世に勝れたる四人の武士也」 と、その名が挙げられ、『小右記』長和2年(1013)7月16日条には、「保昌は道長の一子のごとし」と記されている。

 保昌の妻・和泉式部も、寛弘6年(1009)ころに、道長の娘・見上愛が演じる中宮彰子に仕えており、このころ保昌と出会って、結婚したという(関幸彦『武士の原像 都大路の暗殺者たち』)。

 保昌自身も『後拾遺和歌集』の歌人である。

 紫式部の恋の相手と、推定する考えもあるという(関幸彦『藤原道長と紫式部 「貴族道」と「女房」の平安王朝』)。

 現時点では、藤原保昌役の俳優は発表されていないようだが、ドラマには登場するのだろうか。