文=加藤恭子 撮影=加藤熊三 写真提供=吉田酒造店

2010年に「つぼみ」として初リリースされ、進化を遂げてきた「Tsuchida 99」。米麹99%仕込み(!)という“日本酒の限界”に挑んだ、土田酒造の超個性派酒だ。つねにドキドキ感あふれる魅力的な酒づくりに圧倒させられる土田酒造とUNITED ARROWSがコラボしたら……。オシャレすぎる酒質と“土田哲学”に度肝を抜かれた! 「ツチダ99UAバージョン」(土田酒造 × UNITED ARROWS) 720ml 3300円(税込)

日本酒のギリギリを攻めた、超濃厚スペック

 びっくりした。これほどアイスクリームがおいしくなる日本酒があろうとは。熟したマスカットのような濃密な甘酸っぱさとともに、上質な生クリームのような繊細かつなめらかな感覚がふんわりと広がり、すべり落ちてゆく。ひんやりとしたアイスクリームをひとさじ味わうと、クリーム感が大幅に増幅。グラスを前にぴしっと姿勢を正したくなるような清々しさも、ある。もうこれは完璧なアイドル!

アイスクリームと合わせると「ツチダ99UAバージョン」に心を射抜かれる。黒こしょうやピンクペッパーをかけても

 毎年9月9日に発売される「Tsuchida 99」といえば、もはや知らない日本酒好きはいないであろう。米麹99%、つまりほぼ米麹だけでつくられる土田酒造の個性派酒だ。ちなみに一般的な日本酒は、麹米20%、掛け米(蒸し米)80%くらいでつくられている。今春、この酒をベースに2回目のリリースを迎えたのが「ツチダ99UAバージョン」だ。

 土田酒造の6代目蔵元、土田祐士さんにまずは「Tsuchida 99」の誕生について教えてもらった。

人口3100人ほどの群馬県川場村にある土田酒造。地元では「誉国光(ほまれこっこう)」の銘柄で親しまれてきた

「もともと実験が好きで、新しいものにどんどん着手したいという気質がありまして(笑)。あるとき、酒屋さんと話していて“米麹をたくさん使ったら、どんな酒になるんだろうね?”という話になり、どうせなら全量米麹で仕込んじゃえ、ということで誕生したのが全麹仕込の“つぼみ”というアイテムでした」

 しかし、なんと3年目に「100%米麹の酒は、日本酒に分類できない」ことが判明! 税務署も前例のない造りだったがゆえに、気づかなかったそうだ(そんなことがあるのか……)。そこで誕生したのが99%米麹仕込みの「Tsuchida 99」。日本酒のスターターである“酒母(しゅぼ)”に、おまじない程度のごく少量の白米を入れ、あとは米麹と水だけを加えて発酵を進める。

土田酒造の6代目蔵元、土田祐士さん。「どんどん自由に、楽しく日本酒を飲んでほしいと思います。乳酸菌飲料を混ぜたり、ファストフード店のハンバーガーと合わせてもOKですよ!」