日本の酒類業界・リーディングカンパニー サントリーが2024年の「国内酒類事業方針」そして「ビール事業方針」を発表した。

今回の会見の登壇者は鳥井 信宏 サントリー株式会社代表取締役社長と常務執行役員にしてビールカンパニー社長の多田 寅(すすむ)氏

いよいよ『サントリー生ビール』が飲食店にも進出

今年もサントリーの2024年「国内酒類事業方針」そして「ビール事業方針」会見が開催された。

昨年は『ザ・プレミアム・モルツ』リニューアルが大きな話題だったけれど、今年は、現時点ではそのレベルのトップニュースをともなっての会見ではなかった。

とはいえ、やはり強いのはビール類。2023年の国内市場の前年比を99%と見積もる一方で、サントリーの販売実績は109%だった、とした。

これは2023年に6年ぶりのリニューアルを果たした『ザ・プレミアム・モルツ』、2023年4月に新登場となった『サントリー生ビール』、さらに糖質ゼロの『パーフェクトサントリービール』のいずれもが好調だったことに加えて、酒税法の改正によって逆風気味の『金麦』も堅調だったことによるようだ。

ビールカンパニーの商品群

2024年1月1日からサントリーのビールカンパニー社長に就任した 多田 寅(すすむ)氏によると、ポートフォリオは2023年中に出来ている、として、2024年は新商品の投入よりも、現状のブランドたちでこの好調を継続させるのが基本路線のようで、そのなかでは新ブランドの『サントリー生ビール』を前年比150%まで伸ばしていく、というのが華々しい目標値になっている。

サントリー 常務執行役員 ビールカンパニー社長 多田寅(すすむ)氏

そもそもこの『サントリー生ビール』は20代から40代までの若い層をターゲットにしたブランドで、その狙いもあたり、マーケットを若返らせつつ2023年に計画の約1.3倍、399万ケース(633ml×20本換算)を販売したとのこと。2024年の目標値は600万ケース。なんと早速、パッケージをちょっとだけリニューアルし(パックやケースで生の字をより目立つようにして、色調も明るくするとのこと)、ビール自体は飲んだ瞬間の刺激感と全体のバランスを調整するという。

マイナーチェンジといった印象だけれど、若さが重要なブランドゆえに、スピード感をもってアップデートしていく、ということだそうだ。

さらに、3月からはいよいよ飲食店向けにも『サントリー生ビール』を展開する。

業務用『サントリー生ビール』は2024年中に取扱店15,000店を計画しているという

こうなってくると生産体制も強化が必要ということで、これまでの群馬工場、京都工場への設備投資のほか、2月から九州熊本工場、9月から東京・武蔵野工場でも『サントリー生ビール』の製造を開始する。

サントリーの見立てでは、2024年の国内ビール類の市場は、全体的には新ジャンルの勢いがさらに落ちることでややダウントレンド。サントリーはそのなかで『金麦』の堅調を保ちつつ、伸びが予想されるビールで家庭向け・業務用ともにライバル以上に販売を伸ばす、という計画だ。また、これには限定品等の投入による飛び道具的な売上増よりも、基本をしっかり成長させる、という意図があるようだ。

ビール以外ではジンに動きあり

ビール類以外でも2024年のサントリーの方針はビール類同様と言えそうだ。

鳥井 信宏 代表取締役社長は会見のなかで、国内の酒類市場全体が10年以上、緩やかにダウントレンドなのだ、と発言した。そして、この国内酒類市場を活性化するのは「サントリーの責務」と続けたのだった。

サントリー株式会社 代表取締役社長 鳥井信宏氏

今回は1年の大きな方針の発表のため、どうしてもビールの話題が主役にはなるものの、日本の酒類市場というと、30年前の1993年はビール73%、それ以外27%という構成比だったという。それが2023年ではビール類のシェアは56%にとどまり、RTD19%、日本酒・焼酎14%、ウイスキー・ワイン・リキュール・スピリッツ等11%と多様化している。さらに、ビール類をとってみても、常に決まった種類のビールを買うのではなくて、さまざまな種類のビールをシチュエーションに合わせて選択するというスタイルに変わっていることをサントリーはデータで示した。

会見資料より

ゆえに、多様なニーズにそれぞれ対応する商品をもっていること、それぞれのジャンルで大きなシェアを誇っていることはサントリーの強みであり、それらをまんべんなく成長させることが、国内酒類市場の活性化、および、持続的な事業成長を実現する、とした。

その上で、今回具体的な話があったのは、まずウイスキー……とはいえ、ウイスキー苦境の時代にも『山崎』と『白州』を頂点にウイスキー事業で力を緩めなかったのがサントリー。ジャパニーズウイスキーが需要に対して供給が追いついていない追い風状態のいまここで、その立役者のひとりたるサントリーが、品質にしても需要創造にしても、なんらかでしくじる、ということは考えづらいだろう。

またノンアルコールにおいてもリーディングカンパニーとして引き続き、攻勢を続けるようだ。こちらは「のんある酒場」のようなイベントを強化して接点を増やすとのこと。またビールテイスト飲料『オールフリー』は2月にリニューアルし、味わいに磨きをかけるとともに、パッケージデザインを変更する。

2月製造分からリニューアル版となる『オールフリー』
麦芽由来のうまみ成分を増やし、苦味を調整、飲みごたえとすっきりとした後味を実現したという

加えて、詳細は今後の発表となるようだが、2024年はジンカテゴリーの「需要創造を行う」としている。サントリーの見立てによると、ジン市場は2021年に84億円規模だったものが、2022年に200億円規模まで成長。2030年には450億円規模と大きく成長する可能性があるとしている。というよりも、現状、市場シェアの8割弱を占めるサントリーなので、そういう市場にするつもり、と言ったほうがよいかもしれない。これは近々、まずは『サントリージン翠(SUI)』を中心とした発表があるようなので期待したいところだ。

ザ・プレミアム・モルツ(サステナブルアルミ)が数量限定で新発売

といったことで、大きな新商品発表はなかった今回の会見だけれど『ザ・プレミアム・モルツ』に「サステナブルアルミ」という、通常のアルミ缶に対してCO2排出量を25%削減したアルミ缶を使用したものが1月30日(火)から数量限定で発売されるというニュースはあった。

ザ・プレミアム・モルツ(サステナブルアルミ)

このアルミ缶は、住友商事、住商メタレックス、神戸製鋼所、大和製罐とサントリーの5社共同の企画・製造とのこと。サントリーは2030年までに温室効果ガス(GHG)排出を自社拠点で2019年比50%削減、バチューチェーン全体で同30%削減、2050年までに実質ゼロを目標に掲げている。