挽きたて、打ち立て、茹でたて地で行く、十割蕎麦を味わう
大橋さんはお父さんも蕎麦職人。ご本人曰く「エッジがきいた蕎麦を打つ」という父から、最初は手ほどきを受けたという。その後、独学も交えて今のようなスタイルに。なるべく挽きたて、打ち立てを食べて欲しいと、店内で製粉し、その場で打つという十割蕎麦だ。
その挽きたてに一役買っているのが、自慢の製粉機「やまびこ」。高速で挽くので摩擦熱がでにくく、粗挽きにもできる優れものだ。
「挽くのが早いから、新幹線の名前からとって「やまびこ」なんです」
なるほど~面白い。見たところ、コンパクトだし、操作方法もシンプルで便利そうだ。大橋さんは製麺所でも働いた経験があり、そのつながりでこの製粉機とも出会えたという。挽きたての蕎麦粉で作る『そばがき』もこの製麺機あればこそ。
料理は、奥様の弓惠さんが担当。料理上手なお母さまの味や毎日の晩酌で培ったという、気の利いた酒のアテが充実している。『樽酒と蕎麦のセット』についた、豆皿のアテも実に楽しい。カリカチの揚げ蕎麦、しっとり鴨ロース、彩も美しい野菜のごま酢和えに甘味がちょこんとある。この甘味は、北野天満宮にあるポルトガル菓子のお店のものというのがだからひねりがきいている。
「樽酒の酸味とあいますよ」とは弓惠さんだ。
VIBESという店名には、いろいろな人がお酒を通じて、等しく楽しく過ごして欲しいという意味を込めている。
「昼からやっているので、様々な職種の方が来ますよ。大学の先生やお寺の方とか、着流しのカンカン帽でいらっしゃる粋な紳士だったり、銭湯でひと風呂浴びてから来る方だったり」。
やはりエリアの特性なのか、なかなかアカデミックなムードも漂ってくるではないか。さらに昼飲みだからこそ、そんな多様性もあるのだろう。
「酒を飲む場では、旦那衆も職工さんも関係ないじゃないですか、立ち飲みだからこそフラットにつきあえる。そんな店にしたいですね」と、大橋さんは大きな笑顔をみせた。