取材・文=岡本ジュン 撮影=村川荘兵衛

秘密めいた階段を降りると、吸引力のあるワインバーの扉が開く

『バール・バリオーレ』との出会いは京都好きの東京人に連れられてきたのが始まり。こちらは料理人で、ワインと日本酒好きの店主中村美沙さんが営むワインバーだ。オープンは2021年と比較的新しく、最近人気の岡崎エリアにもほど近い、河原町丸太町から鴨川方面へ抜けたあたりにある。中村さんのひょうひょうとした接客はサラリと心地よく、お酒もつまみも自分好みでまた来たいと思わせる魅力にあふれている。

中村さんが塗ったというミモザのような明るい黄色の壁も印象的

 ほぼ以前の店の造りのままだという空間は、大胆にカーブしたオーバルのカウンターがぐるりと店内を一周し、アーチを描く高い天井、壁面にワインセラーという凝った空間。なんとなく海の底のようにシンとした空気感が漂い、時間も、京都にいるということも忘れさせてしまうような不思議な場所でもある。

 

アジアからイタリアへ、故郷をまたぐつまみこそ最高の酒のあて

 メニューは、ナチュラルワインとお燗向きのわりとしっかりめの骨太な日本酒が主役。ことに日本酒はかなりの個性派ぞろいで、それだけに好き嫌いも分かれるところ。

マニアック(?)な日本酒は店主とよく相談してからオーダーを

「いつもどんな日本酒を飲んでますか、とまずは聞くようにしています。もし好きなタイプのお酒でないなら、お互いにもったいないことになってしまいますから」と中村さん。誠実にお酒を楽しんで欲しいという気持ちに愛を感じさせるではないか。

 無国籍で楽しいおつまみの数々はその日の気分で登場する。例えばのメニューを少し紹介すると、「ゆで卵とシソのサルサヴェルデ」は文字通りしそ使いがポイントのウフマヨ風おつまみ。

「ゆで卵とシソのサルサヴェルデ」400円。しそのサルサヴェルデに、アンチョビのようにへしこを使っている。日本酒との相性も抜群

 定番化しつつあるという「むちむち蒸し春巻き」は、揚げ春巻きや生春巻きと違って、むちっとした蒸した皮がなんともいえない食感。たっぷりの葉野菜で巻いてバクっと豪快にかぶりつきたい。日本酒にもワインにも、ビールにもぴったりだ。

「むちむち蒸し春巻き」1500円。パクチーもたっぷりだけど赤ワインとも相性良し