「たっぷり豆と雑穀のスープ」もみるからに豆好きの心をとろかす姿をしている。イタリア修行時代の思い出の料理へのオマージュというが、おつまみに混ざってスープがあるというのもなんだかホッとできる。
「何か温まるものをひとつは置きたいと思っているんです」と中村さん。胃に優しく落ちていくスープは、これから痛飲するであろう酒飲みの体にも優しく、同時に豆を食べるようなボリューム感が、つまみにも最高なのである。
エスプレッソやドルチェがあるのもバールならではのスタイル。〆と言わず、チョコレートムースやアイスクリームをワインのお共にするのも悪くない
京都の人気店ともつながる人脈もまた地元の強み
店主の中村さんは京都生まれ、京都育ち。お母さんが料理好きだったこともあり、小さい頃から食べることが大好きだったという。そんなことから飲食店のサービスを出発点に、飲食の道へと踏み込んだ。やがて料理をやりたいと思うようになり、料理修行でイタリアへ渡ることとなる。
京都へ戻ってからは、ピッツァの名店『ピッツェリア ナポレターナ ダ ユウキ』、パリ仕込みのステーキを出す『Le 14e(ル・キャトーズィエム)』、ナチュラルワインと四川料理で一世を風靡した『大鵬』という人気店で次々と働き、めきめきと実力をつけていった。
午後3時と言う早い時間から飲めるのも、旅人にとっては使い勝手がいい。地下にあるこの店は、窓がない分、時間の経過を忘れてゆったりできる。ただしゆったりし過ぎると帰りの新幹線を逃すのでそこは注意が必要だ。
近頃、京都にはナチュラルワインを出す店も増えているが、そんな中でも店主の個性が店に充満しているようで、東京にもどこにもないなぁと思わせてくれる一軒なのだ。