いざサーキットへ!

 それではサーキット走行での印象がどうだったかといえば、こちらはいかにもマクラーレンらしいものだった。すなわち、スタビリティとグリップ性能が恐ろしく高く、コーナリングパフォーマンスはバツグンに優れていたのである。

 エストリル・サーキットの路面コンディションはドライで良好。正直、個人的にあまり得意なサーキットではないものの、事前にコースレイアウトを徹底的に頭にたたき込むことで、走り始めからそれなりに攻めた走りができたつもりでいる。

 それでも、グリップ限界にはなかなか到達できなかった。

 これには、タイヤが公道走行時のピレリPゼロからスポーツ性能を高めたPゼロ・トロフェオRに履き替えられていたことにくわえ、リアウィングを大型化するなどして改善を図ったエアロダイナミクスの効果も関係しているはずだが、それにしても、かなりプッシュしたつもりでもリアタイヤが滑り出す兆候さえ認められなかったことには驚かされた。ヴァレルンガ・サーキットで720Sを試乗した際にはいとも簡単にグリップ限界に到達したことを思い出すと、隔世の感があるといっても過言ではないくらいだ。

 とはいえ、その絶大なグリップとスタビリティに支えられながらサーキットを走る感覚は、まさにレーシングカーそのもの。しかも、最終減速比を15%下げた関係で、エンジンのトップエンドでのパワー感はさらに鋭さを増し、ドライバーに得も言われぬ刺激を与えてくれる。

 一般道ではより快適性を高め、サーキットでは一層パフォーマンスを向上させる。きっと、これこそが750Sの目指した姿なのだろう。それを見事に両立してみせたマクラーレンに、改めて畏敬の念を抱いた。