大谷 達也:自動車ライター

自然吸気のV12以上に優れたエンジンなどない

「ランボルギーニにとって、V12は単なるエンジン以上の存在であり、ブランドの核心といっても間違いありません」

 試乗会の冒頭、ランボルギーニのマーケティング兼セールス担当取締役を務めるフェデリコ・フォスキーはそう語った。

「そして、自然吸気式V12以上に優れたエンジンはこの世に存在しないというのが、私たちの信念なのです」

 既報のとおり、レヴエルトは新開発のV12エンジンを搭載している。自動車の電動化が急速に進み、ヨーロッパ域内では内燃エンジンを積んだ自動車の生産が2035年以降は全面禁止されるかもしれない状況(現在は「カーボンニュートラル燃料を使用すれば内燃エンジンが延命できる可能性」も浮上している)のなか、このタイミングで完全に新規なV12エンジンを開発することは、極めて「勇気の要る判断」だったと推測される。

 なぜなら、前作アヴェンタドールがデビューしたのは2011年だったので、今年発表されたレヴエルトのモデルライフが終わるのも12年後の2035年ごろと見込まれる。したがって、もしもEU域内でのエンジン生産が「予定どおり」2035年に禁止されるとすれば、せっかく新開発したV12エンジンも、このレヴエルト一代で「用済み」となる可能性をはらんでいるのだ。

 それは、何世代もかけてエンジン開発への投資を回収するのが一般的な自動車産業界においては、「危険な賭け」といわれかねない判断といえるだろう。

「たしかに新しいV12エンジンの開発には大きな投資を実施しました」 私の質問に、フォスキーニは率直に答えた。「けれども、私たちは決して無謀な判断を下したわけではありません。エンジン開発に投じた予算は、レヴエルト一世代で回収できる計画です」

日本ではすでに3年待ち?

 フォスキーニのコメントに私は息を呑んだが、彼らの“賭け”は成功を収めつつある。なにしろ、今年3月に発表されたレヴエルトは世界的に大好評を博しており、すでに多くの地域で2年分の生産枠を超える受注が舞い込んでいるという。

 とりわけ大成功を収めているのが日本で、その受注数は3年分の生産枠に迫るそうだ。

「ランボルギーニにとって日本は重要なマーケットです」とフォスキーニ。「とりわけ、自動車文化への理解が深い日本ではV12モデルが人気で、レヴエルトの受注数でいえば日本は北米に続く世界第2位の規模となっています」

 彼の言葉を信じれば、「史上最後のV12ランボルギーニ」となるかもしれないレヴエルトの価値を、日本人はよく理解しているといえるだろう。

 そんなレヴエルトの国際試乗会が、イタリアのヴァレルンガ・サーキットで行なわれた。ちなみに、イタリア国内での認証がまだ取れていない関係で、今回はサーキット走行のみの試乗となったことをあらかじめお断りしておく。