文=酒井政人 

2023年5月14日、関東インカレ1部男子5000mを先頭でゴールする三浦龍司(順大) 写真=時事

各校の主力がガチンコ勝負

 箱根駅伝へと続く学生ランナーたちの戦い。5月11~14日に行われた関東インカレは初夏の総力戦といえる重要な大会だ。

 今年の箱根駅伝を制した駒大は鈴木芽吹(4年)、篠原倖太朗(3年)、佐藤圭汰(2年)。同準優勝の中大は吉居大和、中野翔太(ともに4年)、吉居駿恭(2年)、溜池一太(2年)というエース級を〝温存〟するかたちをとったが、各校の主力がガチンコ勝負を繰り広げた。

 

2部の長距離種目は王者・駒大が強さを発揮

 関東インカレの男子は1部(全16校/今年の箱根駅伝出場校では中大、早大、順大、法大、東洋大、明大、東海大、国士大、山梨学大、日体大、大東大)と2部(1部以外の大学)でレースが異なる。長距離種目に関しては出場選手の多い2部の方が熾烈といえるだろう。そのなかで圧巻の強さを見せたのが王者・駒大だ。

 10人の留学生が参戦した初日の10000mは唐澤拓海(4年)が激走した。序盤から先頭集団でレースを進めると、残り500mでアタックする。すぐに追いつかれたが、日本人トップとなる4位(28分26秒83)でフィニッシュ。箱根6区で区間賞を獲得した伊藤蒼唯(2年)も8位(28分30秒34)に入り、超激戦種目でダブル入賞を果たした。

 唐澤は2年時に関東インカレ2部の5000mと10000mで日本人トップに輝き、箱根駅伝は1区を2位と好走した実績を持つ。しかし、昨季は左脚(膝やアキレス腱)を痛めることが多く、「競技に足が向かなかった」と振り返る。三大駅伝の出番はめぐってこなかった。

 それでも最終学年を迎えた今季は、「駒澤に陸上をやりに来たので、最後はちゃんとやろうという意識が出てきた」と奮起。4月22日の10000mを自己ベストの27分57秒52で走ったダメージが残っていながら、2年ぶりの関東インカレでも結果を残した。

 本人は、「表彰台を目標にしていたので、ちょっと情けないなと思います。最低でも3番に入りたかった」と悔しさを噛みしめていたが、駅伝シーズンへの期待は高まっている。「三大駅伝はすべて1区を走りたい。目標は区間賞。最低でも3位以内で走れるように頑張っていきたい」と唐澤。2年連続で駅伝3冠を狙う駒大の〝切り込み隊長〟になりそうだ。

 最終日のハーフマラソンでは箱根Vメンバーの赤星雄斗(4年)と山川拓馬(2年)がワン・ツーを飾った。タイムは1時間3分24秒と1時間3分27秒。3位は吉田凌(創価大3)で1時間3分46秒だった。

 初めての関東インカレで緊張していたという赤星。「言ったら怒られるんですけど、調子も良くなかったので、入賞が目標だったんです」というが、途中で合流した1部のケニア人留学生に食らいつくと、最上級生のプライドが爆発した。「山川は練習から強くて、粘りもある。でも後輩には負けられない」と残り1kmで引き離した。

 一方、先輩に遅れをとった山川も3月に腰椎版ヘルニアを発症して、1カ月ほど走れなかったという。それでも、「言い訳はできません。他大学には絶対に負けない、と決めていたので、最低限の目標は達成できました」と優勝できなかったことを悔やんでいた。

 今年の箱根駅伝は山上りの5区を1時間10分45秒(区間4位)と好走した山川。第100回大会は「区間賞・区間新が目標です。1時間10分を切れるような選手になりたい」と再び、5区で勝負したい意向を明かした。3人のエースを外しながら、長距離種目を席巻した駒大。昨年以上に戦力が充実している。

 同じく主力4人を出さなかった中大は1部ハーフマラソンで主将・湯浅仁(4年)が日本人トップの2位(1時間2分35秒)。同5000mで吉中祐太(2年)が8位入賞を果たしており、今年も総合力が高そうだ。