取材・文=吉田さらさ 写真=フォトライブラリー
国宝の建造物が四つ並ぶ
関西には、奈良や京都以外にも、歴史上重要な神社が数多くある。今回ご案内する住吉大社もそのひとつだ。大阪市中心部からどこか懐かしい風情の路面電車(阪堺電軌)に揺られていくと、住吉鳥居前という駅がある。これまで数えきれないほどの神社に詣でたが、電車を降りてすぐ鳥居というのは珍しい。地元ではこの神社を、親しみを込めて「住吉っさん」と呼ぶ。
鳥居をくぐると、まず、こちらの第一の見どころである反橋がある。おそろしく急こう配の太鼓橋だ。このような太鼓橋は危険もあるため通行禁止になっていることが多いが、こちらは階段があるのでなんとか渡れる。ここを渡るだけでお祓いになるということなので、お参り前に心身を清めたい人は、ぜひやってみよう。
その先にまた鳥居があり、幸壽門というありがたい名の四脚門がある。そこをくぐると国宝の四つの社殿が並ぶ境内だ。なぜ四つかというと、祭神が四柱だからである。
四柱のうち三柱は底筒男命、中筒男命、表筒男命。国生みの神話に登場する伊邪那岐命は、亡くなった妻の伊邪那美命を追って黄泉の国に行き、ケガレを受けた。そしてこの世に戻り、ケガレを落とすために禊祓を行った。この三柱はその時に海中から出現した神々で、総称して住吉大神という。
残りの一柱は神功皇后。この方はのちに応神天皇となる子を身ごもったまま筑紫から船に乗って朝鮮半島に出兵し、新羅を降伏させた。皇后は住吉大神のご加護に感謝し、帰還の途中、ご神託に従って現在の地に祀った。のちに神功皇后も併せて祀られ、祭神は四柱となった。
四つの社殿はローマ字のLのような形に並んでいる。一番奥が底筒男命を祀る第一本宮、その次が中筒男命を祀る第二本宮、手前が表筒男命を祀る第三本宮。そしてその右隣に息長足姫命(神功皇后)を祀る第四本宮。これらは1810年(文化7年)に造られたもので、「住吉造」という形式だ。
檜皮葺で直線的な屋根の切妻造り。妻の部分が正面を向く妻入りが特徴である。これは伊勢神宮の神明造りや出雲大社の大社造と並ぶ神社建築史上最古の様式の一つで、いずれも国宝に指定されている。大都市の市街地に国宝の建造物が四つも並んでいるとは驚きだ。