取材・文=吉田さらさ 写真=フォトライブラリー

上野東照宮 唐門

祭神は東照大権現こと徳川家康

 今年のNHK大河ドラマ「どうする家康」は、これまでにない斬新な徳川家康の描き方で話題になっているようだ。家康は、一般的には「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」の句であらわされるように、「殺してしまえ」の織田信長、「鳴かせてみよう」の豊臣秀吉と比べ、がまん強く思慮深い人物というイメージで捉えられている。

 いやいや、穏やかなばかりではなく、老獪な面もあったから天下統一を成しえたのだという見方もあるし、実際は意外に短気な性格でもあったと言われる。しかしながら、現在放送中の大河ドラマの中の家康は、今のところは優柔不断で弱々しい田舎侍で、重大事の際にもなかなか決断できず、家来たちに「どうする?どうする?」と詰め寄られることが多い。

 このような人物が、今後どのようにして将軍にまで登り詰め、世界でも有数の長さを誇る安定的な治世の基盤を築くことになるのか。ドラマの先行きが興味深くもあり、少し心配でもある。

 先日、桜がほころび始めたころ合いに上野に行く機会があり、上野東照宮に立ち寄ってみた。こちらの祭神は東照大権現こと徳川家康である。

 歴史上の人物を神として祀る神社には2種類ある。ひとつは非業の死を遂げた人物の霊を鎮める目的で建てられた神社、もうひとつは、著しい功績を挙げた人物を神格化して祀る神社だ。前者の例は菅原道真を祀る天満宮や天神社、後者には豊臣秀吉を祀る豊国神社、織田信長を祀る建勲神社などもあるが、知名度や規模の点で東照宮が圧倒的だ。