取材・文=吉田さらさ
源頼朝に厚く信仰された箱根神社
首都圏在住の人にとって身近な温泉保養地である箱根は、地形も変化に富んでいるため、観光的にもさまざまな見どころがある。今回はその中のひとつ、箱根神社をじっくり歩いてみよう。
芦ノ湖の遊覧船に乗って湖上を行くと、湖中に立つ朱塗りの鳥居が見える。これは平和の鳥居という人気フォトスポットのひとつだが、ここから上陸できるわけではない。お参りは、元箱根方面から参道を歩いて行こう。第四鳥居をくぐった先にある正参道石段の眺めも素晴らしい。登り切ったところに第五鳥居があり、そこをくぐると御本殿がある。
こちらの御祭神は箱根大神。この神は、ニニギノミコト、コノハナサクヤヒメ、ヒコホホデノミコトという三柱の神の総称である。ニニギノミコトはアマテラスオオミカミの孫で、天孫降臨のエピソードで知られる。コノハナサクヤヒメはその妻で富士山の浅間大神とも同一視される美しい女神、ヒコホホデノミコトはその子で山幸彦とも呼ばれる。
この地では、古代から箱根山を神とみなす山岳信仰が盛んであった。奈良時代の757年には、万巻上人という僧が、箱根大神の御神託を授かって現在の地に社殿を建立したと伝わる。鎌倉時代には源頼朝に厚く信仰され、「関東守護」、「関東鎮守」の神社として鎌倉幕府に庇護された。その後戦国武将や徳川家康の崇敬も受け、現在は関東でも屈指のパワースポットとして人気を集めている。
箱根神社の境内にある九頭龍神社新宮
御本殿でのお参りを終えたら、右隣りの九頭龍神社新宮でもお参りしよう。九頭龍とはその名の通り九つの頭を持つ龍のことで、もともとは人里を脅かす毒蛇であったが、万巻上人の教えによって改心し、以降は芦ノ湖の守護神となった。
九頭龍は、もともとはこの場所からかなり離れた湖畔の森の奥深くに祀られ、現在はその場所に九頭龍神社本宮がある。しかしそちらがあまりにも人気が高いため、比較的アクセスしやすい箱根神社の境内にも新宮を建てたのである。新宮の前には、龍神水という霊験あらたかな水を汲める水盤がある。九つの龍の頭から水が流れ出る仕組みになっており、持参の水筒などに汲んで持ち帰ることも可能だ。専用のペットボトルも販売されている。