文=酒井政人 

2022年1月2日、第98回箱根駅伝、往路2区を走る吉田礼志(中央学大) 写真=アフロ

 来年正月に箱根駅伝は第100回記念大会を迎えることになる。すでに関東学生連合チームが編成されないことは発表されているが、第85、90、95回の記念大会は23チーム(通常は20校+関東学生連合)が出場。第100回大会も「出場枠」が拡大される公算が大きい。

 栄光のスタートラインを目指す大学には〝ビッグチャンス〟となる。そこで前回、箱根駅伝に出場していない大学のなかで注目すべきチームを紹介していきたい。

 

エース吉田が引っ張る中央学大

 まずは前回の予選会で涙を飲んだ中央学大だ。箱根駅伝は2015年から5年連続でシード権を獲得するも、2020年の予選会で敗退し、連続出場が18で途切れた。翌年は本戦に復帰したものの、昨年も敗退した。

 それでも昨季からエース吉田礼志(3年)の充実が光る。昨年12月に10000mで27分58秒60をマークすると、今年2月の丸亀国際ハーフマラソンを日本歴代9位の1時間0分31秒で走破。3月の日本学生ハーフマラソンは13㎞付近で靴紐を結び直すアクシデントがありながら、追い上げて2位に食い込み、今夏開催されるFISUワールドユニバーシティゲームズの日本代表に内定した。

 エースの活躍でチームの雰囲気も上々だ。川崎勇二監督も、「27分台の吉田を含めて、10000mで29分を切っている選手が6人います。きちんと揃えることができれば、全日本も箱根もしっかりとクリアできると思っています」と戦力には自信を持っている。

 一方で、「問題は予選会にどう合わせるのか。昨年の箱根予選会は主力が半分ぐらい出ていないんですよ。練習量が少ない割には故障が多いですし、戻りも遅い。今季から福山良祐コーチを入れて、リハビリのことも彼に指導してもらっています」とバックアップ体制も整えた。

 再び、箱根駅伝の〝シード常連校〟に返り咲くことができるのか。激動の箱根駅伝で中央学大は過渡期にあるといえるだろう。

 そのなかでも川崎監督は自身の〝指導理念〟を貫いてきた。箱根駅伝の結果よりも、選手の「将来性」を強く意識しているのだ。

 ジャパンマラソンチャンピオンシップ(JMC)シリーズⅡポイントランキングでは細谷恭平(黒崎播磨)が3位、市山翼(サンベルクス)が5位に入るなど、中央学大勢は駒大勢に次ぐ活躍を見せている。

「私どもの大学には強豪校のトップはほとんど来ません。チームの3番手、4番手が中心です。細谷は故障が多く、市山は5000m15分台の選手でした。もともと劣等感を持っている子が多い。私の役割は劣等感を払拭して、上でやりたいという気持ちにさせることです。大学で高校時代に勝てなかった選手に勝ち、実業団では大学時代に勝てなかった選手に勝ってもらえればなと思っています。吉田はセンスがある方ではないんですけど、非常にタフなんですよ。しかも、我慢強くて、弱音を吐きません。将来はマラソンでの活躍を楽しみにしています」

 エース吉田礼志が引っ張る中央学大の選手たちは、第100回箱根駅伝をステップにさらに〝上のステージ〟を目指していく。