写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川 剛(TRS) 編集/名知正登

すべては才気あふれるブランド創始者から

 快適性とエレガンスを備えた機能的モカシンシューズがつとに著名なトッズ。現在はイタリアンラグジュアリーの粋である高感度ウェアを含め、トータルにて展開する服飾ブランドである。

 トッズグループと言えば世界有数の規模であり、2022年にはグループ全体で10億ユーロもの年間売上を実現した実績を持つ。そんな巨大企業のトップこそトッズの創設者であるディエゴ・デッラ・ヴァッレだ。

 そもそも名門として知られるデッラ・ヴァッレ家だが、ディエゴは青年時代を国外の留学先で過ごし、ある経験を得て帰国したという。名作「ゴンミーニ」はトッズの名を世界に知らしめる契機となったモカシンシューズだが、その原点にはディエゴが学生時代に暮らした米国において手にしたドライビングシューズに満足しなかった、という思いがあるのだ。

 かくして機能的かつ快適性もあり、そして職人的な完成度も備えたゴンミーニが誕生することとなったのである。そこには才気あふれる企業人にしてイタリアを代表するファッショニスタであるディエゴの感性が余すことなく詰め込まれている。

 世の中のニーズを掴んでいながらリアルに使い勝手に優れ、そしてお洒落かつ美しく手作りの味わいが感じられる仕上り。今ではスポーツアウターやレザーブルゾン、それにバッグやアクセサリーまで扱うトータルブランドに成長したトッズ。しかしそのエッセンスは、ブランドの原点であるモカシンシューズに集約されているのである。