新たなプロダクトを作るとき、最初から広く届けるものを作ろうとせず、まずは3人の顧客を思い浮かべて考える「N=3の法則」で進めようー
こう話すのは、前職のリンクアンドモチベーションにてSaaS製品「モチベーションクラウド」をヒットさせ、現在はナレッジワークCEOを務める麻野耕司氏。冒頭の言葉は、11月24・25日に行われるイベント「Techtouch DAY 2022」の特別講演で語るもの。一体どんな意味なのか。この記事では、講演の一部を以下に公開する。
<お知らせ>
本記事でインタビューしたナレッジワーク 麻野氏も登場するオンラインイベント「Techtouch DAY 2022」を2022年11月24日(木)、25日(金)に開催します!
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人気国産クラウド、そして解約率0%のプロダクトはどう生まれたか
「Techtouch DAY 2022」は、DXやデジタルビジネスの最新事例を紹介するオンラインセミナー。テックタッチ社の主催であり、11月24日のDay1は大企業向けのセミナー、25日のDay2はSaaS事業者向けのセミナーが用意されている。そして、このDay2で注目を集めるのが麻野氏の講演だ。
麻野氏は、リンクアンドモチベーションで組織改善クラウド「モチベーションクラウド」を立ち上げた一人。この製品は国産クラウドにおいて、当時史上最速でARR(※)10億円、20億円を突破した。
※年間経常収益・年間定期収益。毎年決まって得られる1年間分の収益のこと
その後、2020年には株式会社ナレッジワークを創業し、社名と同名の新たなSaaS製品「ナレッジワーク」をリリースした。こちらは営業力強化クラウドであり、トヨタ自動車、日本通運、リクルート、日清食品などの大企業が導入している。
なお、トライアル版も含めてリリースから2年以上経つが、サービス解約社数はゼロとのこと。高い顧客満足度を叶えているのが特徴と言える。
この2つの新規プロダクトを立ち上げた麻野氏が、その経験とノウハウを余すことなく伝えているのが本講演だ。SaaSプロダクトの立ち上げ方・作り方をテーマに、プロダクト設計の前に重要な「顧客価値」の設定から、実際のプロダクトの作り方まで、自身が立ち上げた2つのプロダクト事例を踏まえて語っている。
なかでも特徴的なのは、プロダクト開発の前段階で、彼が重視するさまざまなポイント。その中に、冒頭で触れた「N=3の法則」も入っている。ということで、講演で語ったポイントをいくつか紹介したい。
広く届けるな、深く愛されろ(N=3の法則)
プロダクトを立ち上げる際、最初からなるべく広く届けようと考えることが多い。そのための市場調査を行うケースも少なくないだろう。しかし、麻野氏は「この段階での市場調査はほとんど意味がない」という。
「それよりも大切なのはN=3の法則です。これは、自分の思い浮かんだ『この顧客は(自分たちの考えているプロダクトを)使って頂けそう』という顧客を3社設定し、プロダクトの企画書ができたらその3社に持っていきます」
その上で、3社すべてがこの製品を買いたいという反応を見せたら、その製品の成功確率は高く、3社中2社が買いたいなら、ブラッシュアップして開発を進めるべきだという。一方、この商品を買いたいという会社が0~1社なら白紙にしたほうがいいとアドバイスする。
モチベーションクラウドもナレッジワークも、構想段階で3/3社が評価してくれたとのこと。その経験も踏まえ、まずは深く愛してくれる3社を見つけることが重要。その後は他の会社にも広げ、各社の声に合わせて機能開発を進めればいいという。
作ってから売るな、売ってから作れ
SaaSプロダクトのアイデアが固まったとしても、すぐ開発に取り掛かるのは「失敗確率が高くなる」と麻野氏。BtoB製品の良さは、実物の製品がなくても、その製品の概要や価格を資料で顧客に提示しやすいこと。であれば、「製品を作る前に、まずその製品の資料を作り、頭の中に浮かんだ顧客候補にぶつけてみてほしい」と話す。
そうして、相手の反応が芳しくなければ製品を練り直し、また資料を持っていく。そのサイクルを繰り返して、開発前にプロダクトの質を上げると「成功確率が高まる」という。
未来を売るな、製品を売れ
顧客に営業する上で、プロダクトから派生したビジョンや未来を語るケースもあるかもしれない。麻野氏も「特にスタートアップの創業者は、顧客に対して壮大なビジョンを語ることが多い」と話す。しかし、それは良い手法ではないと彼は考える。
理由として、ビジョンで売る2つのリスクがあるという。1つは、その後の解約率が高くなるケースが多いこと。もう1つは、創業者しか同じ手法で売れない可能性が出てくること。つまり、再現性が高くないのだ。
「ビジョンだけでなく、顧客の理想と課題、プロダクトの価値、方法を提示することが大事。その4つがつながった状態で買ってもらうとビジネスも安定的に成長します」
実際の講演では、こういった内容について詳細に語られる。なお、ここに記載したのはプロダクト開発に入る前段階の話だが、講演では、開発していく上でのポイントも語っている。
例えばKPIの設定方法や、顧客からフィードバックをもらう際、聴き方ひとつでプロダクトの“次”につながるかどうかが変わることなど。SaaSプロダクトの立ち上げ方から作り方まで、そのノウハウが約40分の講義に詰まっている。
興味のある方は、ぜひ11月25日13:10~の本講演を見ていただきたい。
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Techtouch DAY 2022では、このほかマネーフォワードやウイングアーク1stなど、SaaSを展開する企業が登場。また、日産自動車や大日本印刷など、大企業におけるDXのキーマンも講演を予定。DXとデジタルビジネスの事例を伝えていく。
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