デジタル化の進展やサステナビリティーといった課題に加え、地政学リスクの急速な高まりなど、企業を取り巻く環境は激変している。今リスクマネジメントの核を担う企業法務こそが、デジタル活用や組織開発を率先して行い、リバイタライズ(再活性化)するべきだ。現在サントリーホールディングスが進めている、企業法務のデジタルおよび組織両面での挑戦について、法務部長 兼 コンプライアンス室部長の明司雅宏氏に聞く。

※本コンテンツは、2022年5月23日(月)に開催されたJBpress/JDIR主催「第2回法務・知財フォーラム」の特別講演3「企業法務のリバイタライズ~デジタル活用と組織開発~」の内容を採録したものです。

リモートワークで生産性低下の日本企業と法務のデジタル化の現状

 コロナ禍で急速に広まったリモートワークだが、日本では「在宅勤務の生産性が低い」と感じている人が多いという。2021年2月の内閣官房成長戦略会議事務局「コロナ禍の経済への影響に関する基礎データ」によると、アメリカでは4割以上が「在宅勤務の方が効率的」と答えており、「職場と同じ」を含めると8割以上がリモートワークを肯定的に捉えている。これに対し、日本では「非効率的」という人が8割以上を占める。

 日米で単純に比較はできないが、なぜ日本のリモートワークはこれほど「生産性が低い」とされるのか。同じ資料では、在宅勤務における生産性低下の要因も調査した。その結果、「対面での素早い情報交換ができない」38.5%、「通信環境や設備が劣る」34.9%に続いて、「法令・社内ルールで、自宅からではできない仕事がある」と33.1%の人が答えている。

 これについて、サントリーホールディングス株式会社法務部長 兼 コンプライアンス室部長の明司雅宏氏は「医療行為などは別として、私たちのバックオフィス業務の中で、法律上、自宅でできないと定められている仕事はおそらくありません。社内のルールで縛られて生産性が低下しているのが、多くの日本企業の現状です」と指摘する。

 さらに明司氏は、日本企業の法務におけるデジタル化の現状についてデータを示す。『会社法務部〔第12次〕実態調査の分析報告』(商事法務)によると、企業法務の業務効率化・共有化への取り組みについてのアンケートで、「部門内のデータを共有ファイルに保存している」という企業は69.4%。いまだに3割の企業は、個人のパソコン内あるいは紙でデータを保存しているということだ。他の項目の数値からも、企業法務のデジタル化が進んでいないことが見てとれる。

 こうしたテクノロジーの導入を妨げるものとして、明司氏は「理解不足」と「既存の体制が強固である」こと、そして「費用対効果の見えにくさ」の3つを挙げる。特に管理部門の費用対効果は人件費ベースで見られるため、「システムを入れて人を減らす」とは言い出しにくい。また逆に、テクノロジーを導入することでもたらされるメリットとして明司氏は、「テクノロジーの重要性の理解」「変化対応」「リーガルコスト」の3つを挙げる。

「もともと法務のような間接部門は、どのくらいのコストがかかっているか見えにくいのが難点でした。今後は、法務ならリーガルコストとして見える化が求められていくでしょう」と語る。