契約書レビューサービスでリーガルテックをけん引するLegalForce代表の角田望氏に話を聞いた

 リーガルテック市場、特に企業法務の領域が今、注目されている。ビジネスに寄り添う企業法務はDXの要とも言えるからだ。リモート会議と同様に、企業の中には電子契約などのサービスが導入され始めている。ここでリーガルテックが置かれた状況を考えてみたい。

リーガルテックは誰をサポートするのか

 フィンテック(金融×IT)、アグリテック(農業×IT)、エデュテック(教育×IT)など、「○○テック」という特定領域のDXを示す言葉がある。法律分野における「×IT」がリーガルテック。日本でも言葉自体は2005年あたりから登場しているが、2018年に大手の経済研究所が市場規模予測を出すという領域になっている。当時の予測では、2023年には国内市場規模が353億円に達するとされた(図1)。

図1 リーガルテック国内市場規模推移と予測(矢野経済研究所)

 経済産業省も2019年に「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 法務機能強化 実装ワーキンググループ」を立ち上げ、法務機能実装の方向性を探る勉強会を行っている。このワーキンググループでは企業法務の中でも、リーガルテックサービスの効果的な領域として特に契約書関連の領域に注目している。

図2 リーガルテック(Legal Tech)を取り巻く日本の市場構造(2019年の経済産業省「事務局資料」より)

 実際、2020年から始まるコロナ禍の影響下で社会全体がDXヘブーストする流れに乗って、電子契約サービスが一気に伸びたのも記憶に新しい。

図3 電子契約サービス市場の2020年度までの売上データと2021年度移行の売上予測(ITR)

 しかし、リーガルテックが一般的に浸透してきたかというとまだまだそういう状況になってはいない。その理由として、いわゆる「ITによる民主化」とはちょっと異なり、基本的に直接の利用者は、法律の知識のある(あるいは既に法律実務に携わっている)人であること、が挙げられる。

 例えば、フィンテックはITを活用することでエンドユーザーである一般の個人にとって金融サービスを身近なものにした。金融機関にとっては効率化やコスト削減につながる、無視できない重要な施策になっているし、各種クラウド会計サービスはITによる会計の民主化といわれるレベルで広がっている。

 一方、リーガルテックの場合、そのサービスやツールは法律実務に携わる人が使うものという位置付けで、一般の市民にとって法律業務を身近にするというものではない。そこに法律という分野の特殊性がある。なぜ、一般向けに法律実務を広くサポートするという役割を担えないのだろうか。技術をもってすれば可能なのではないか。そんな疑問を抱えながら、契約書レビューサービスでリーガルテックをけん引するLegalForce代表の角田望氏に話を聞いた。