今、戦略人事は「管理型」から「任せる型」への変革が求められている。グローバルレベルで刻々と状況が変化する中、それぞれの企業が構築すべき人事の仕組みとは一体どのようなものなのか。「自社らしさ」を根幹に据えた戦略人事について、LIXILグループの執行役副社長をはじめ、TBSホールディングス社外取締役やGEヘルスケア・ジャパンの監査役など、複数の企業の顧問を務めるpeople first代表取締役八木洋介氏に聞いた。

※本コンテンツは、2022年6月17日(金)に開催されたJBpress/JDIR主催「第2回戦略人事フォーラム」の基調講演「戦略人事と企業変革」の内容を採録したものです。

キーワードは「任せる経営」。管理型からの脱却を目指す

 現在、複数の東証一部上場企業でアドバイザーを務める八木洋介氏。昨今の日本企業が置かれている現状を示す上で同氏が提示するのが、米国ギャラップが2年に1度行っている、世界各国の企業を対象とした従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査の結果だ。

 これを見ると、日本は「熱意あふれる社員」がわずか6%しか存在しないことが分かる。調査対象140カ国中135位の結果だ。八木氏は、この原因として女性の活用が進んでいないことが考えられると分析する。

 世界経済フォーラムが発表した、世界各国の男女格差を示す「ジェンダー・ギャップ指数」において、日本は0.656という厳しい評価を受けている。日本で就業する6700万人中3000万人は女性だが、男性と持っている能力に差がないにもかかわらず、女性が約3分の2しか活用されていない現状を考えると、仕事への熱意を測るエンゲージメントが世界最下位レベルにまで落ち込むのもうなずける。

 この結果について、八木氏は「メンバーシップ型の雇用形態」が影響していると語る。戦後復興の中で生まれたこの雇用モデルは、ルールや制度を整えて物事を標準化することに重きを置いてきた。そのため、当時は年功序列や終身雇用も戦略的にふさわしい構造であったといえる。しかし、円高により日本のアドバンテージが失われていく中で、日本企業が世界のトップ水準と対等に戦わなければならない状況に陥ったとき、メンバーシップ型の雇用形態では立ち行かなくなってしまった。日本はこの変化に対応することができず、結果的に「失われた30年」が生まれてしまったのだという。そして、メンバーシップ型雇用の崩壊はコロナ禍でより顕著となった。リモートワークが日常化したことで、アウトプットさえできれば個人に仕事の仕方を任せることができる時代を迎えたからだ。

 八木氏は、今後「任せる経営」を進めていく上で必要なことを次のように語る。

「まず、パーパス、ビジョン、共通の戦略が必要です。この先、問題は複雑化する一方で専門性は細かくなります。現場で協力しなければ問題を解決できない以上、情報の共有が非常に重要です。また、任せる時代を迎えてもミスや想定外の事態は必ず起こります。そのときにアラートを上げられなければ会社として機能しません。心理的安全性の担保も不可欠でしょう。そして、資本主義でもうければよいという時代は終わり、経営にも価値観が求められるようになりました。加えて、SDGsの概念も無視できません。今、求められている『Authentic Leadership(オーセンティックリーダーシップ)』とは『本物のリーダーシップ』と翻訳されることが多いですが、私は『自分らしい価値観のあるリーダーシップ』であると捉えています」