6月3日、アマゾン・ワールドワイドコンシューマー(WWC)部門CEOのデイヴ・クラーク氏の退任が発表された。クラーク氏は20年以上、ベゾスに直接仕え、現在のロジスティクスやEコマースオペレーションを構築してきた中心人物だった。昨年1月に辞任した大番頭のジェフ・ウィルク氏に次ぐ退職だ。アマゾンには20人を超すCEO直轄の戦略部隊、Sチームが存在するがほとんどがSVPの職位で、部門CEOはWWCとAWSとしかない。従って、クラーク氏はCEOの右腕とも言える立場だった。
同氏はアマゾンオンラインストアの屋台骨を作り革新を続けてきただけでなく、コロナ禍では需要の急増で生活必需品以外を4週間も発送を止めざるを得なかった緊急時にも、中心となって危機を乗り越え、その後2年間にわたって物販事業の急拡大を支えてきた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』と『ファクトセット』の試算によると2021年6月段階でアマゾンの過去12カ月間のGMV(流通取引総額)は6100億ドル、同7月のウォルマートの12カ月間売上高は5660億ドル、1カ月のズレはあるもののアマゾンはGMVでは既にウォルマート売り上げを抜いていることを示した。また、JPモルガンのアナリストは2021年6月にアマゾンの2020年度のGMVを試算してアマゾンがウォルマートを抜くのは2022年と予測していた。
Q1業績赤字転落の背景に見えるオンラインストア成長の鈍化
しかし、アマゾンは直近のQ1で2015年以来、初の赤字、当期損益38億に転じた。アンディ・ジャシーCEOは「コンシューマー事業は2020年には前年比39%の急成長を遂げ、アマゾンの25年の歴史で築き上げてきたフルフィルメント網の規模を2倍にしなければならなかった。しかし、現在は施設や人材の規模拡大を追う必要がなくなり、むしろフルフィルメント網のコスト効率に焦点を当てている」と広報資料にコメントし、赤字の要因がコンシューマー事業を支えるフルフィルメントコストにあることを明言している。
アマゾンは2019年度末時点で倉庫、DC、データセンター等の施設1億9200万スクエアフィートを保有していたが、2年後の2021年度末には3億8710万スクエアフィートと、2倍以上の規模に膨らんでいる。『ウォール・ストリート・ジャーナル』によると現在、同社はニューヨーク、ニュージャージー、カリフォルニア、ジョージア州の少なくとも倉庫100万スクエアフィート相当をサブリースし、他にもリース契約の解約を含めた交渉を始めている[1]。