ワインのコンクール、アワードは数あれど「日本ワイナリーアワード®︎」は日本ワインを飲む人に役立つ、バイヤーズガイド的ワインアワードだ。日本ワインのファンも、これから日本ワインを飲んでみようかな?という人も、いまの日本ワインはどんな感じなのか、このアワードの結果を知れば、ズバッとわかる。
日本ワインの成長はとまらない
日本のワイナリー数、400を越えそう……そんなこと言っていたのは、まだ1年前の話だ。それが今年は、日本のワイナリー数は400を越え、このままの勢いでいけば500ワイナリーに届きそう、と言っている。山梨、長野、新潟、北海道、山形、大阪といったすでに歴史あるブドウの産地のみならず、最近では、東京のような都会にもワイナリーが増えてきた。
こうなってくると、もう日本もワインの国。歴史も名声もあるワイナリーもあれば、まだ若いワイナリーもあるし、大規模生産者もいれば小規模生産者もいる。ひとくちに日本ワインといっても色とりどり。うっかり立ち入れば迷子必至というのが現状だ。
日本ワインのバイヤーズガイド
日本ワイナリーアワード®︎はそんな迷路のような日本ワインのガイドになってくれる。この5年間、日本ワインをワインそれぞれではなく、ワイナリー単位で、定点的に観測して、分かりやすくランク付けしてくれているからだ。
具体的には、設立から5年以上経過した国内のワイナリーを対象として、日本ワインの専門家が、多くの銘柄、ヴィンテージにおいて傑出した品質のワインをうみだしているワイナリーに5つ星、全般的に良質で安定感があり、銘柄やヴィンテージによっては傑出したワインを生み出しているワイナリーに4つ星、安定感がありほとんどのワインが良質で安心して購入できるワインをうみだしているワイナリーに3つ星を与え、さらに、評価に値する価値あるワインをうみだしているワイナリーを「コニサーズワイナリー」として、毎年、表彰している。
2022年は327ワイナリーを対象として、211ワイナリーになんらかの賞が送られた。このなかでも5つ星を獲得しているワイナリーは、品質的価値はもちろん、歴史的価値においても、まさに日本を代表するワイナリー。第2回からずっと15のワイナリーが5つ星評価だったのだけれど、今年は、山梨の「Kisvinワイナリー」が、ここに加わって16ワイナリーとなった。
Kisvinといえば、ブドウ栽培のスペシャリスト 荻原康弘さんとブルゴーニュ仕込みの醸造家 斎藤まゆさんが中核となって、世界的にもぐんぐん評価を上げているワイナリー。そのピノ・ノワールなどはもはや欲しくてもなかなか手に入らないほど……
欲しくてもなかなか手に入らないピノ・ノワールといえば、北海道の「ドメーヌ・タカヒコ」のそれも有名だけれど、こちらも5つ星。また、長野の「Kidoワイナリー」、「小布施ワイナリー」もカルト的人気を誇るワイナリー。どちらも5つ星評価だ。
その一方で「サントリーワインインターナショナル」、「シャトー・メルシャン」という、歴史的にも規模的にも押しも押されもせぬ日本ワインのリーディングカンパニーも、5つ星評価。
5つ星ワイナリーのワインは日本ワインの頂点だけれど、個人的には4つ星ワイナリーまでは、頂点と言っていいとおもう。日本に暮らすワイン好きには、少なくともその作品のどれかひとつくらいは一度、味わってみてもらいたいし、その成り立ちや哲学に少しでも触れてみてもらいたい。4つ星までなら、まだ、全国400ワイナリーとして、そのうちの76に過ぎないのだから、なんとかなるはず!
具体的な受賞ワイナリーについてはページ下のオフィシャルサイトをご参照いただきたい。
女性の活躍にも注目
発表会・授賞式は6月3日(金)にオフラインで開催され、オンラインで中継された。
今年は昨年、一昨年と比べれば移動の自由がきくこともあって、ワイナリーからの参加者も多く、イベントの最後の方では、5つ星ワイナリーから、日本の女性醸造家のパイオニア「タケダワイナリー」の岸平典子さんと、今回、5つ星ワイナリーとなった「Kisvinワイナリー」の斎藤まゆさんを、日本ワインを追い続けるワインジャーナリスト 石井もと子さんがインタビューをする、という時間が設けられた。ここでは、このお二人はもちろんのこと、日本で活躍する女性醸造家たちにスポットライトが当てられた。
実際のイベントの様子も以下で見ることができるのだけれど
ここで列挙すると、5つ星、4つ星ワイナリーから、「機山洋酒」の醸造家 土屋由香里さん、「中央葡萄酒」の三澤彩奈さん、「シャトー・メルシャン勝沼ワイナリー」の丹澤史子さん、今年3月までは「丸藤葡萄酒工業」で活躍し、独立して「Cave an」を立ち上げる安蔵正子さん、一昨年まで「フジッコワイナリー」で活躍していた「seven cedars winery」の鷹野ひろ子さん、「白百合醸造」の土橋敏子さん、「サッポロビール」の営業職から「グランポレール勝沼ワイナリー」の醸造家へと転身した久野靖子さん、「農楽蔵」の佐々木佳津子さんが紹介された。
女性だから、男性だから、というのは今の時代、取り立てて言うべきことではないのかもしれないけれど、個人的に、日本ワインは、女性醸造家のワインが美味しいとおもうので、ご注目いただきたい。