日々の業務がDXにつながるという意識で仕事に取り組んでいる
創業以来、印刷技術と情報技術への強みを生かして事業領域を広げ、環境やエネルギー、ヘルスケアなどの事業にも注力している大日本印刷。近年のDX推進体制が評価され、2021年には経済産業省から「DX認定事業者」に認定された。執行役員であり、新規事業の創出を担うABセンターのセンター長を務める金沢貴人氏に、大日本印刷のDX推進の取り組みや今後の展望を聞いた。
――大日本印刷がDXに取り組んだきっかけを教えてください。
金沢 大日本印刷(以下DNP)は創業以来、印刷業を生業としていますが、将来的に書籍や販促物が電子化され、紙の印刷物の需要は減少するだろうという危機感は早い時期からありました。印刷用の組版をコンピューターで行う「CTS」を導入した1970年代からデジタル化の取り組みを進めてきました。さらに2001年には「P&Iソリューション」という事業ビジョンのもと、印刷技術に情報技術を掛け合わせて新しいサービスを作り出し、得意先企業の抱える課題を解決していこうという取り組みを始めました。
2015年には、それまでのような得意先企業の課題解決にとどまらず、印刷と情報の強みを掛け合わせて、得意先企業の先にある社会を自ら見据えて、社会課題を解決するイノベーションを生み出していく「P&Iイノベーション」という事業ビジョンを打ち出しました。これにより、ソリューションからイノベーションへと考え方を大きく変えることになったのが、当社が明確にDXを考え出した地点と言えるかもしれません。
――ステップに沿ってDXを推進するという考え方ではないということですよね。
金沢 そうですね。DXの専任組織を作り、そこがDXを推進するというような考え方が一般的かもしれませんが、当社には特定の人たちだけがやるのがDXという意識はありません。社員一人一人が日々やっていることがDXにつながるという意識を持って、全社で取り組みを行っています。
――具体的には、どのような取り組みを?
金沢 以下に挙げる「事業の推進」と「基盤の強化」の両輪で推進していくことが、DNPグループ全体のDX推進になるのだという考え方のもとで進めています。事業の推進というところでは、1つは新規事業の創出ですね。もう1つは、既存の事業において現在の業態やサービスに固執せず、DXによって新しい進化を遂げようという取り組みです。
基盤の強化としては、主に2つの取り組みを進めています。1つは、製造部門の工程の“改善”ではなく“革新”。例えば、現状では在庫を持っている製品に対して、持たずに済む仕組みを考えようといったことですね。もう1つは、社内の仕組みの変革。経費精算システムや会社全体のコミュニケーションツールなどにもどんどん新しいものを取り入れて、業務スタイルや働き方を大きく変えていこうというものです。