ホールフーズ・マーケットのオーダーを配送する自転車駐輪スペース 〔出所〕平山幸江撮影

 4月6日の記事(撤退が始まったウルトラファースト配送企業の今後)でご紹介したようにアメリカでは撤退も始まったウルトラファースト配送市場だが、一方で大手オンデマンド配送企業の参入が始まっている。さらに、ウルトラファースト配送企業がヨーロッパから参入を始めて1年半たつのにスピード配送を誇ってきたアマゾンから特にニュースを聞かないのも気になる。今回はオンデマンド配送企業の参入による短時間配送市場の今後とアマゾンの状況を見てみたい。

ドアダッシュは自社ネットスーパーで参入

 昨年12月以降、ウルトラファースト配送企業は3社が運転資金の枯渇を理由に撤退した。しかし、同時期にオンデマンド配送最大手のドアダッシュは、同社ネットスーパー「ドアダッシュ」で、マンハッタン、チェルシー地区に10~15分配送で参入した。送料無料で約2000アイテムを午前7時から午前2時まで配送する。同社の通常配送はギグワーカーが行うが、15分配送は福利厚生を支給した正規雇用社員が、ダッシュマートのダークストア網から配送する。

「ダッシュマート」のダークストア内什器 〔出所〕ドアダッシュ社

 おさらいになるが、ウルトラファースト配送企業の事業モデルの原型は、①自社の小型ダークストア網から、②自社配送員が、③自社が所有する在庫(2000~3000SKU)を販売し、④自社で開発したAIを活用したプラットフォームで時間とコストを最適化して、⑤15分以内に配送する、というEコマースだ。今すぐ欲しいという消費者ニーズによって市場は急成長しているものの、運営費が高く、収益化へのシナリオが不明確という課題が浮かび上がっている。

 ドアダッシュの事業モデルはこの原型通りだが、既にレストラン配送およびドアダッシュ事業で全米の顧客情報を持っていること、また、地元の小規模メーカーや小売店の商品約400アイテムを販売する等、小商圏でピンポイントなマーチャンダイジングを展開している、といった点が強みだ。