民間のサービスは、ユーザーが購入する前の問い合わせから購入、アフターサービスに至るまで、多くをスマートフォンで可能にしている。一方、行政サービスはいまだに紙や対面中心の対応が多く残っている。職員の負担、市民の利便性からみても行政サービスのデジタル化は不可欠だが、この課題に対して経済産業省ではどのような取り組みを行ってきたのか。また、目指す行政DXの姿について、経済産業省の情報プロジェクト室長であり、デジタル庁企画官の吉田泰己氏に聞いた。
※本コンテンツは、2022年2月17日に開催されたJBpress主催「第3回 公共DXフォーラム」の特別講演Ⅱ「経済産業省DXの取組のこれまでとこれから」の内容を採録したものです。
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行政サービスのデジタル化の重要性
行政サービスの手続きは、いまだに紙や対面の対応が中心であり、職員の負荷も高い状況だ。これをデジタル化して職員の負担軽減と市民の利便性向上を同時に達成するのが、行政DXの目指す理想の一つだ。吉田氏は、現状の問題点とデジタル化の可能性について、次のように話す。
「例えば、ユーザーである市民は、複数のサービスを利用する際、窓口が異なると何度も同じ内容を記載・入力させられることになります。また、郵送で書類を提出する場合、添付漏れがあると再度、郵送を求められます。一方、民間企業のサービスはデジタル化が進み、一度手続きをしたら、同じ企業の他のサービスを利用する場合でも、再度、情報を入力する手間はありません。このように、双方のサービス利用体験には大きな差があります。今後は行政サービスにおいても、1回提出した情報は2度と提出しなくてよい、入力時も漏れや誤りをチェックしてくれるなど、デジタル化による利用体験の向上が不可欠です。その実現においては、民間サービスとの連携なども今後視野に入れるべきでしょう。」
優れたユーザー体験のサービスでなければ、ユーザーである事業者に利用してもらうことはできない。利用してもらえなければ、デジタルデータがたまらないという悪循環に陥る。逆に、利用しやすい環境をつくり、多くのユーザーに利用してもらえるようになれば、デジタルデータは行政に蓄積されていく。データを利活用できる環境・仕組みの構築が重要となる。