東京オリンピックへの挑戦
その後、平野はある決断をくだし、注目を集めることとなった。スケートボードでの東京オリンピック挑戦だ。
「スケートボードがオリンピックの正式種目となった以上、スルーするわけにはいかないです」
子どもの頃、スノーボードを始めるとともに、スケートボードも始めていた。とはいえ、スケートボーダーとして大会に出場してきたわけではない。だから驚きとともに、脚光を浴びることになった。
見事、代表入りを果たした平野には大会でも関心が集まった。試合では決勝に進むことはかなわなかったが、それでも平野への称賛が薄れることはなかった。
何がそうさせたか。平野の挑戦する姿勢にほかならない。
スケートボードに挑んだのも「誰もやったことがないことにチャレンジしたい」という思いが強かった。未知の世界を切り開こうとした。
挑戦し、それをかなえるために努力を重ねる。その姿あればこそ、人々は応援し、称えたのだ。
その姿勢はスノーボードでも一貫している。より難度の高い技を追い求め、よりレベルの高いパフォーマンスを志してきた。そこにリスクを伴っても、一貫して挑み続けてきた。平野が共感を呼ぶゆえんだ。
東京オリンピックの試合を終えて、平野はこう語っている。
「誰もやっていないことは、こんなにも大変なんだと実感しました」
得たことも小さくはない。
「人ができないことにチャレンジする難しさや自分との闘いは、スノーボードではなかなか感じないですし、それが自分自身を強くしてくれたと思います」
そして、すでに北京オリンピックへと目を向けていた。
「半年(の準備)でどこまでやれるかもチャレンジですし、挑戦の流れは終わっていません」
再びスノーボードへと照準を向け、迎えた今シーズン、ワールドカップ開幕戦で4位に入ると、第2戦では優勝、続く第3戦でも優勝を果たし、調子を上げてきた。
どこまで自分は行けるか——挑戦するアスリート、平野歩夢が3度目の大舞台に立つ。