2022年2月4日から20日まで開催される北京2022冬季オリンピック。活躍が期待されるアスリートを、五輪競技を中心に取材活動を続けるライターの松原孝臣さんが紹介します。開催前の予習にご一読ください。

文=松原孝臣

2021年12月31日、スピードスケート北京五輪代表選考会での小平奈緒 写真=森田直樹/アフロスポーツ

30歳にさしかかってからの「世界一」

 日本スピードスケート界を牽引してきた第一人者である。小平奈緒は、そう呼ぶにふさわしい実績を積み重ねてきた。

 オリンピックは2010年のバンクーバーを皮切りに、北京で4大会連続出場となる。バンクーバーの団体パシュートで銀メダルを獲得し、前回の平昌大会で500mで日本女子初の金メダルを獲得、1000mでも銀メダルを手にしている。

2018年2月18日、平昌五輪 ピードスケート女子500m、 小平が金メダル、李相花(韓国)が銀メダルを獲得 写真=Pro Shots/アフロ 

 500mと1000mの総合成績で争われる世界スプリント選手権では2017、2019年に金メダル、世界距離別世界選手権の500mにおいては2017、2020年に金メダル・・・日本を超えて、世界の第一人者であり続ける。

 輝かしい成績以上に小平を際立たせるのは、その足取りにある。

 団体パシュートで銀メダルを得たバンクーバーだったが、個人種目で見れば1000m、1500mともに5位であった。続くソチは500m5位、1000mは13位。これらが示すように、第一線にいたものの、世界をリードする位置にいたわけではなかった。初めて世界一になったと言えるのは、2017年の世界スプリント選手権だが、このとき、小平は30歳にさしかかっていた。つまりはキャリアを長年積み重ねてから花を開かせ、そしてそこからパフォーマンスを上げていったことにこそ、小平の特筆すべき点がある。

 転機は、ソチにあった。

 

オランダで開花した才能

 バンクーバー後、飛躍を期して男子とそん色のない重量のバーベルを用いるなど徹底して筋力アップに取り組んだのをはじめ、誰もが認めるほど真摯に努力を続けた。

 迎えたソチ大会の500mでは平地で行われる会場での自己ベストのタイムもマークした。それでも表彰台に届かなかった。