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文=松原孝臣
短距離から長距離までこなす「オールラウンダー」
今から13年前の言葉は、今も強く記憶に残る。
「人生が変わっちゃいました」
日本スピードスケート史上初めての中学3年生でバンクーバー五輪日本代表に選出されたとき、高木美帆は語った。
もし、選ばれていなかったら今日は、もしかしたらなかったかもしれない。あのときを契機に、高木は世界のトップを争う選手となる人生が始まった。
近年の成績はまぎれもなく高木がその位置にあることを示している。
前回大会の平昌五輪では1500mで銀メダル、1000mで銅メダル3人がチームとなって行なう団体パシュートでは金メダル。1大会ですべての色のメダルを獲得する女子選手は、夏冬の両五輪を通じて初めての快挙だった。
その翌月には500mから3000mの範囲の異なる距離4種目で競う世界オールラウンド選手権で、欧米以外の選手としては初めてとなる総合優勝を果たした。
翌シーズンには、500mと1000mの総合成績で競う世界スプリント選手権、世界オールラウンド選手権(カルガリー)でともに総合2位。さらに2019-2020シーズンの世界スプリント選手権でも総合優勝。押しも押されもせぬ第一人者として活躍する。
これらの成績から分かるように、高木の特徴は、短距離から長距離までをこなせる点にある。いわゆる「オールラウンダー」であり、どの種目でも高いレベルにあることだ。それは昨年末の北京五輪代表選考会でもいかんなく発揮された。すでにワールドカップの成績で代表入りが確実になっていた1000mは参加しなかったが、出場した500、1500、3000m3種目すべて優勝。これらに加え団体パシュートと、5種目で代表に選ばれたのである。500mを含めての5種目出場は1992年アルベールビルの橋本聖子以来のことだ。