だがこうした契約企業のドライバーも含め、アマゾン倉庫における災害時避難体制が徹底しておらず、安全対策は不十分だと指摘されている。

 一部のドライバーは所定のエリアにトラックを止めたり、帰宅したりするように指示された。一部は倉庫に戻り、トイレに逃げ込むように指示された。だが、その直後に建物が崩壊したという。

 アマゾンの倉庫内には、竜巻などの悪天候時の集合場所が定められている。しかし、ある従業員は「その場所には天井から案内板が吊されているものの、周囲に重くて大きな荷物などが積まれており危険だ」と話している。また別の従業員は「倉庫では気象災害時の避難訓練を一度も行ったことがなく、緊急時の屋内退避場所に関する指示は一度も聞いていない」と話している。

シェルター設置の義務付けなし

 前述したとおり、今回の災害を巡り労働安全衛生局(OSHA)が現在、調査を行っている。OSHAのガイドラインでは、竜巻発生時の避難場所として地下室や地下シェルター、最下階の小部屋や廊下が最適だと指摘している。だが、物流企業に対しシェルターの設置を義務付けてはいない。

 OSHAは、雇用主が全倉庫従業員に対し避難場所の周知を図ったり、屋内退避訓練を定期的に実施したりするよう推奨している。ドライバーに対しても、同様の避難行動を周知するよう求めている。

 しかし雇用法の専門家はOSHAの調査について、「従来の基準に沿った形式的なもので対象は狭い」と指摘している。OSHAが確認するのは、非常口がいつも利用可能状態になっているかや、緊急時行動計画が作成されているかどうかに限定され、建築基準などの調査は所管外だという。

 「たとえ、OSHAの調査で違反行為が見つかったとしても、罰金は通常数千ドル(数十万円)と軽く、大企業にとっては痛手にならない」とこの専門家は話している。