米中西部や南部で2021年12月10日から11日かけて発生した竜巻で、イリノイ州のアマゾン・ドット・コムの物流倉庫崩落問題を巡り、米労働安全衛生局(OSHA)が安全面に問題がなかったかを調査している。だが、OSHAの調査は最低限の安全基準を満たしているかを調べるもので、今後起こり得る災害から従業員を守るための対策づくりには不十分だと指摘されている。米CNBCが12月20日に報じた。
男子トイレに逃げ込むも竜巻直撃
CNBCによると、アマゾンの配送ドライバーであるゲーリー・クイグリーさんは10日午後7時30分ごろ、異常天候に気づき、配車係のケビン・ディッキーさんにトラックから連絡した。ディッキーさんも天候の悪化を認識しており、クイグリーさんに、イリノイ州エドワーズビルにある「DLI4」と呼ばれるアマゾンの倉庫に戻って帰宅するように指示した。クイグリーさんが倉庫を離れて帰路についた午後8時27分に竜巻が倉庫を襲った。
約10万2000平方メートルの施設屋根の一部が吹き飛び、高さ12メートル・厚さ30センチメートルのコンクリート壁が崩壊した。竜巻の最大風速は時速241キロメートルに達していたとみられている。このとき、配車係のディッキーさんを含む7人が男子トイレに避難していたが、竜巻はトイレのある倉庫南側を襲い、ディッキーさんを含む5人が死亡した。
クイグリーさんの同僚であるクレイグ・ヨーストさんはコンクリートがれきの下敷きとなり、身動きが取れない状態だった。後に他の従業員に通報をしてもらい、レスキュー隊に救出されたが、ヨーストさんは骨盤・股関節骨折の重傷を負った。地元警察はその後、倉庫で1人の女性の死亡も確認されたと発表した。
被害者は配送会社の社員
アマゾンのDLI4倉庫で被害に遭った人はほぼすべてが、同社と契約している配送会社の社員だった。アマゾンは、物流業務の大手への依存を減らす取り組みの一環として、18年に宅配事業の起業支援プログラム「デリバリー・サービス・パートナー」を始めた。リース車両や制服、ガソリン、保険などの業務に必要なものを安価に提供し、アマゾンの電子商取引(EC)商品を専門に配送する業者を増やしている。CNBCによると、アマゾンは米国で現在1000社以上のパートナー企業と契約しており、8万2000人以上のドライバーを抱えている。