DXには経営・事業上の“明確な目的”が必要だ!
つまり、日本企業はDXそのものに対する考え方を根本から変える必要がある。藤田氏はDXの本質について、次のように説く。
「目的なきDXというのは、単なる“石ころ”と同じ。つまり、見ているだけ(そこにあるだけ)。それでは何の役にも立ちません。例えば、『くぎを打つ』という動作した瞬間に、ただの石ころが“金づち”の代用品に変わるのと同様、DXも使い方次第で課題を解決する“ツール”になります。DXがイノベーティブかどうかは、使用者(=DX推進企業)が目的と活用方法を編み出せるかにかかっています」
そのためにも、DXを推進する上での経営・事業上の“明確な目的”が必要であるが、日本のデジタル推進の多くは、「本末転倒=DX自体が目的になっている」と藤田氏は話す。
「DX自体を『自社の目的』として実施した企業は、テックジャイアントと呼ばれる企業を見ても過去に例がありません。AmazonのAWSという Cloudサービスは、もともと自社保有していた膨大なECデータ処理の社内システムの外部提供が、事業収益の柱になったサービスです。
AppleやGoogleもインターネット環境やCPUの発達を背景に、データモビリティーへの消費者行動の変化を創造。FacebookやYouTubeもまた、ネット環境と通信インフラの発達を背景に、コミュニケーション手段の変化を仕掛けました。
DXに成功したといわれている企業のほとんどは、社会・顧客の変化に対応した新製品・サービスをデジタル基盤で提供した結果、後から「成功」が付いてきているのだ。
「デジタル、イコール目的だったのではなく、新規サービスを提供したら、それが結果的にデジタルで裏打ちされていたのです。すなわち、『デジタル化をしたいから“何をするか(目的)”を考える』では本末転倒だということです。『したいこと(目的)があるからデジタルというツールでサポートする』という考え方でないと、DXは必ず失敗するでしょう」
藤田氏はまた、「目的」の設定に関して、「SX」「GX」という観点を加味することを提言する。
「SXとはサスティナビリティートランスフォーメーション(事業・社会存続のための変革)、GXはグリーントランスフォーメーション(社会インフラの変革)を指します。世界中の企業が社会や環境に対する態度・スタンスを問われており、投資家もESG投資という形で、環境・社会・事業の継続性への貢献度を判断基準の一つにしています。
再生可能エネルギー、新エネルギー、電動化といったグリーンテクノロジーも同様です。これからのDXは、SXやGXという枠組みの中で、顧客の課題解決やニーズを支える手段として位置付けられ、その結果、社会と企業に継続性をもたらすでしょう」