日本企業のDX導入が「周回遅れ」な理由

 では、日本企業におけるDXの動向はどうか。「日本企業のDX導入は周回遅れ」とやゆされることも多いが、藤田氏も同様の考えだ。

「実際に日米の企業におけるDXの現状を比較すると、そこには顕著な差があります。下の図はDXの推進レベルを表したものですが、アメリカでは何らかのDXに取り組んでいる企業の総数が70%であるのに対し、日本は50%の企業がDXに備えきれていません。

 実行しているDXの中身を見ても、『従業員が新型コロナウイルス感染症の影響で出社できないから、仕方なく勤怠管理のソフトウエアを入れた』など、“DXの本質”を捉えてないパッシブ(受動的)なケースが多々、見受けられました。まさしく日本は“周回遅れ”の状態です。しかし、あえてそれを前向きに捉えれば、市場拡大の余地があると考えられます」

 こうした背景には「DXを必要とする(日本企業の)経営戦略や事業変革意思の欠如がある」と藤田氏は続け、さらに日本でDXが進まない阻害要因は「自前主義と外部頼み」だと指摘する。

「日本の製造業に導入される各種システムを見ていっても、大部分がパッケージ開発(既存システムを活用して開発すること)ではなく、外部へスクラッチ(ゼロからオリジナルのシステムを開発すること)で開発を依頼しています。

 外部への委託率が高いことは、そのまま『ITタレント(IT系の才能のある人材)が外にいる』ことにもつながっていきます。日本企業とって、自前主義から標準化への転換、そして自社のデジタル戦略をリードする人材確保は急務であると考えています」