サーベイフィードバックで実現する職場づくり

60分でわかる「組織開発」の基本

中原 淳(立教大学 教授)/2021.6.2

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※本コンテンツは、2021年3月25日に開催されたJBpress主催「第5回ワークスタイル改革フォーラム」Day2の基調講演「サーベイフィードバックで実現する職場づくり 60分でわかる『組織開発』の『基本』」の内容を採録したものです。

立教大学
経営学部教授
中原 淳氏

サーベイフィードバックが求められている理由

 私は人材開発や組織開発を専門としており、企業と共同研究や効果測定を行ったり、大学・大学院で教育・研究にあたっています。このような研究領域ですから、企業の方々ともたくさんの共同研究やコンサルティング案件でご一緒することがあります。さて、最近、企業経営においては、従業員の意識やモティベーションを調査し、経営に活かすことが行われています。調査とはサーベイ。そしてサーベイを企業経営に活かすことをサーベイフィードバックと言います。本講演は、テーマを「サーベイフィードバック」とし、皆さんが仕事の改善に活かせるよう、理論とともに具体的な事例をお伝えします。

 サーベイフィードバックは、組織調査(サーベイ)を職場に返す(バック)、組織開発の手法の一つです。従業員調査、モラルサーベイ、エンゲージメントサーベイなど、人事領域で流行していますが、本当に活かせている組織は多くありません。

 サーベイフィードバックは、「調査してデータを出すこと」と「データに基づく対話をすること」という2つの要素から成っています。別の見方をすると、「①見える化」「②ガチ対話」「③未来づくり」という3つのプロセスがあります。実践することで、組織の問題を解決したり、メンバー間の関係を良好にしたり、コミュニケーションを円滑にしたり、生産性や創造性を高めたりとさまざまな効果が期待できます。

 サーベイフィードバックは1960年代からある手法です。それが今、見直されているのには2つの理由があります。一つはHRテックです。見える化するツールができたことです。リモートワークが増えたことで進行している「見えない化」は、今後ますます加速するでしょう。もう一つは、エンゲージメントです。端的にいうと組織への貢献意欲です。これが組織の卓越性、生産性を向上させるのに重要だと認識されるようになってきました。離職率、新入社員の定着率に影響する指標にもなります。今、日本は、社員のエンゲージメントが世界最低の国です。なんとか高めなくては、と国も企業も注目しています。

 こうして多くの企業で実施されているサーベイですが、普及するにつれ問題も起きています。サーベイの結果を机にしまって終わり、結果がイントラネットに上がって終わり、忖度(そんたく)して数値を操作し、問題を隠蔽(いんぺい)する。パルスサーベイと呼ばれる高頻度過ぎる調査。これらは、サーベイでとどまりフィードバックが行われていないため、メリットにつながっていきません。経営、人事が基本的手法についてもっと知る必要があります。特にフィードバックに関する知識が決定的に足りていません。

 次の項から、サーベイフィードバックの理論を知ること、実務に活かすことをターゲットにして、詳しく説明していきます。