文=岡崎優子

『ノマドランド』は3月26日より全国にて公開。IMAXでも上映が予定されている
(配給:ディズニー・スタジオ・ジャパン)
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賞レースを席巻する中国女性監督作品

 3月15日、第93回アカデミー賞ノミネート作品が発表された。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、授賞式は2月28日から4月25日(現地時間)に延期。今のところ、関係者が会場に集まりテレビ中継する、例年と同じ形式で行われる予定だという。

 だが、2020年はニューヨークやロサンゼルスなど大都市圏の映画館が休業していたこともあり、メジャースタジオの大作はほとんど公開されなかった。一方、配信作品は活況を呈し、今回のアカデミー賞には最多10部門にノミネートされたデイヴィッド・フィンチャー監督『Mank マンク』を筆頭に、Netflix作品が35部門にノミネートされている。もはや、映画はメジャースタジオの独壇場ではないということか。

 そんな中、25周年を迎えたサーチライト・ピクチャーズ提供、ディズニー・スタジオ配給の『ノマドランド』が作品賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞の6部門にノミネート。監督のクロエ・ジャオは中国出身の女性監督ということもあり、注目を集めている。

 監督賞に女性がノミネートされるのは彼女が6人目。今年はジャオのほか、『プロミシング・ヤング・ウーマン』の女性監督エメラルド・フェネルも候補となり、オスカー関連のニュースはこの話題でもちきりだ。ジャオまたはフェネルがオスカーを獲得すれば『ハート・ロッカー』(09)のキャスリン・ビグローに次ぐ快挙となる。

 また、昨年は韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を受賞。オスカーの歴史を変えたサプライズとして話題となったが、今年、ジャオがオスカーを獲得すれば、アジア人監督の連続受賞となる。同じく6部門にノミネートされている韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョン監督作『ミナリ』と共に、その行方が気になるところだ。

 そういった意味でも、ハリウッドは今、大きな変革期を迎えていると言えるだろう。

 

F・マクドーマンド3度目のオスカー獲得なるか?

 『ノマドランド』はジョシカ・ブルーダーが2017年に発表し、世界的ベストセラーとなったノンフィクション「ノマド:漂流する高齢労働者たち」をフランシス・マクドーマンド主演で映画化。マクドーマンド自身が映画化権を獲得し、製作者としてクロエ・ジャオを監督に起用した。