呆れたのび太の不甲斐なさ

 それから6年。「ドラ泣き ふたたび」と、またもや確信犯的かつ挑戦的なキャッチコピーで煽る。物語は幼稚園の頃に亡くなったおばあちゃんに会いたくなったのび太が、タイムマシンで過去へ行ったことから大きく動く。成長したのび太に驚きながらも、その事実をすんなり受け入れたおばあちゃん。「今度はあんたのお嫁さんをひと目見たくなっちゃったねぇ」とつぶやいたことから、のび太とドラえもんはその願いを叶えるため未来へと向かう。だが結婚式当日、大人になったのび太は逃げていた……。

大人ののび太の声は前作に続き妻夫木聡が担当。おばあちゃんの声の宮本信子は山崎監督念願のキャスティング

 「のび太、逃げた。」はもう一つのキャッチコピー。果たしてのび太はしずかちゃんと結婚できるのか。おばあちゃんに花嫁姿のしずかちゃんを見せてあげられるのか。過去、現在、未来を股にかけた、のび太とドラえもんの冒険が始まる!

 それにしても、あのしずかちゃんと結婚することになりながら、その責任に押しつぶされそうになり逃げ出してしまうなんて。あまりに不甲斐ない大人ののび太に正直イラっとした。前作の感動的な話はなんだったんだ、と。結局、のび太はちっとも子どもの時から変わらない、これまでの数々の冒険は糧になっていなかったのかと苦々しく思う一方、しずかちゃんの変わらない愛に心を打たれる。おばあちゃんもそうだが、のび太の根底にある深い優しさと強さを理解する女性に支えられるのび太はなんて幸せなのだろう。まさにダメンズの希望の星。しずかちゃん、そしておばあちゃんの優しさの奥にある芯の強さ、その包容力にはただただ敬服するしかない。

しずかちゃんの花嫁姿が見られるとは! 結婚式場となったプリンスメロンホテルも前作は外観だけだったが、本作では内部も描かれ

 そして今回はタイムマシンが大活躍。見ていると、未来へ行くときはトンネルがくねくねとし、過去に行くときは真っ直ぐになっている。未来はこの先どうかなるかが分からないため不安定に曲がってしまうのだが、過去は確定しているため真っ直ぐ進めるのだそう。細かな設定に思わず唸る。

 SFファン的には、同じ時間軸にのび太が二人同時に存在し、会話していることに違和感を覚えるが、『ドラえもん』なのだから目くじらを立てるのは野暮だろう。二人は相談し協力しながら、あるべき未来を再構築していく。