例えば、アナウンサーの羽島慎一が吹き替えを担当したことでも話題になった、入れ替えロープ。このひみつの道具を使って大人ののび太と小学生ののび太が入れ替わる。ただ、このロープは不良品で、入れ替わっている時間が長ければ長いほど、元には戻れなくなってしまう代物。さて、入れ替わったまま行方が分からなくなった大人ののび太を二人は必死で探すのだが、タイムリミットが近づいてきて……。

誰もが楽しめるエンタメ作品に

 本作の脚本と共同監督を務めたのは「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(05、07、11)はじめ、昨年は『アルキメデスの大戦』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』『ルパン三世 THE FIRST』を手掛けたヒットメーカー、山崎貴監督。ドラえもん以外にもルパン、ドラクエ、宇宙戦艦ヤマトなど、往年のファンがたくさんいる名作の映画化に果敢に挑戦する、日本でも数少ないエンタテインメントに徹した監督だ。ヒットさせることを責務として全うする監督はそうそういない。

 「何かを残せれば凄くいいけれど、まずはエンタメ。誰もが楽しめるものにしなきゃいけない」との姿勢にも好感が持てる。そこは絶対に守りたいとも。感心するのは脚本。どの作品にも言えるが、山崎監督&脚本作品は大風呂敷を広げながらも、見事に撒いた種を最後には回収、爽快感すらある。監督自身がその作品のファンだからこそ、押さえるツボも心得ている。

 山崎監督はVFX集団、白組に所属。1986年に入社後、CFなどを手掛ける一方、『マルサの女2』(88)『大病人』(93)など伊丹十三監督作品のVFXやデジタル合成を担当してきた。その時の経験が今の山崎監督に多大な影響を与えていることは言うまでもない。

 「伊丹さんが凄いのは、まだペーペーのVFXの駆け出しだった僕をかなり初期段階から呼んでいただいたこと。こんな若造を中枢部分として起用してくれたことが強く印象に残っていて」と大感謝。助監督経験がない山崎監督ではあるが、伊丹組出身を自負していると語っていた。山崎監督のエンタメ哲学、その根源がよく分かるエピソードだ。

 今回、おばあちゃんの声を務めたのは伊丹監督夫人でもある宮本信子氏。伊丹映画のミューズに託した思いは見事に実を結び、印象深いおばあちゃんが物語を盛り上げ、締めてくれる。また一つ、私たちが見たかったドラえもんの物語が誕生、新たな伝説ができたのでは、と思う。

 

『STAND BY ME ドラえもん 2』
2020年11月20日(金)より全国東宝系にてロードショー