その値は今後どうなるのでしょうか。さまざまなケースで検証した結果、受給開始から30年経過した時点の予測は38%で、現在と比べると約4割も下がるというデータが出ています。しかし、そのときに年金受給額がそのまま4割下がるわけではありません。現役世代のモデルとなる手取り収入が増えれば、たとえ年金受給額が増えたとしても所得代替率が下がることもあります。
Q:「マクロ経済スライド」とは?
今年の財政検証で所得代替率とともに話題になったのが「マクロ経済スライド」です。マクロ経済スライドとは、そのときの現役人口の減少や平均余命の伸びなどに合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組み。将来の現役世代の負担が重すぎるものにならないよう、時間をかけて緩やかに年金の給付水準を調整します。
具体的には、賃金や物価による改定率がプラスの場合に、当該改定率から現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整します。スライド調整率とは、公的年金被保険者数の変動率(2~4年度前の平均)に、平均余命の伸び率をかけたものです。
厚生労働省では「現役時代の所得が高いほど所得代替率は低くなり、所得が低いほど所得代替率は高くなる。公的年金制度がもつこのような機能を所得再分配機能という」と説明しています。マクロ経済スライドは、所得再分配のバランス機能ということができるでしょう。
Q:結局のところ、もらえる年金は減るの?
結論として、もらえる年金が今後減っていくことは間違いないでしょう。しかし、ゼロになることはないし、老後資金の柱になり続けることは間違いありません。よくいわれることですが、過度の楽観または悲観をせず、年金で足りない分を自助努力で補うことが重要になります。
厚生年金基金などがない会社員の場合、iDeCoの上限額(年27.6万円)とつみたてNISAの上限額(年40万円)を20年積み立てれば、累計投資元本は1352万円になります。iDeCoの拠出期間は現状の60歳までから65歳までに延長される見込みなので、たとえば、iDeCoとつみたてNISAを月額上限に近い5.6万円ずつ毎月投資して20年間、年率3%の利回りで運用できれば、投資成果は1838万円。同じく4%なら2054万円です。グローバル分散投資を基本にすれば、年率3~4%の利回りはそう難しいものではないでしょう。