ダッシュボードでは、利用企業が見積もりや受注の際に社内で設定した製品1個あたりの標準原価と、実際にかかった原価がどの程度かい離しているかも把握できる。ある製品の実際の原価が標準原価を上回った場合、ダッシュボード上でデータをドリルダウンして原価上昇を招いた工程や生産設備を特定したり、作業の中断が発生していた時間帯(生産設備が稼働していない時間帯)を調べたりできる。

 逆に、実際の原価が標準原価を下回っていたら、新たな引き合いの見積もりに反映するなど、より価格競争力の高い提案につなげられる。

 KOSKAはGenKanのデータを基に作業の中断時間や残業時間、サイクルタイムのバラツキによる原価への影響を分析。その内容を週次や月次、四半期などの頻度でレポートとしてまとめて利用企業に提供する方針だ。

安価な月額料金設定で導入しやすく

 GenKanの料金は10工程あたり月額4万5000円から。たとえば加速度センサーは1台1000円(月額、以下同様)、重量センサーとカメラはそれぞれ2000円。センサーデータをクラウドサーバーに送信する親機は、センサー5台につき4000円という。曽根氏は「中堅中小規模の製造業の利用を促進したり、大手が一部でスモールスタートしたりできるような料金体系を考えた」と話す。

 すでに稼働データを蓄積する機能を持つ生産設備を持つ企業や、稼働モニタリングなどの用途で生産設備のデータを収集する仕組みを導入済みの企業は、GenKanのクラウドサーバーにデータを送り原価計算機能と分析機能だけを利用することもできる。その場合の料金は10工程あたり月額3万円から。

 製造の現場の多くは、常に前年比で数%以上の業務改善効果が求められている。だが、ストップウォッチで作業時間を計測するなどデータの取得に手間がかかっていたことから、製品1個あたりの原価を精緻に算出するために必要な細かいデータを取得してこなかったケースが珍しくない。原価が変動する要因を正しく見極められなければ、改善のPDCAを効果的に実践するのは難しい。樋口氏は「生産性向上や原価低減に向けたKPI(重要業績指標)の適切な設定などを支援し、製造業の経営に役立っていきたい」と語る。