「大きいことはいいことだ――」。ひと昔前に、そう教えられてきた製造業の在り方。
しかし最近では、「大きいことが不利に働くことが増えてきた」と、IoT推進ラボで座長であり、パナソニックの社外取締役を務める富山 和彦氏は語る。
“自前主義”の崩壊、オープンイノベーションのはじまり
かつて栄えた国内メーカーの多くが製品開発を自前主義で行なってきた結果、現在の日本は世界中で巻き起こる技術革新の波に乗り遅れている。近年では、このような状況を覆すために、企業の枠を超え多様な人と人、技術と技術がつながり合い、新たな価値創造を目指すオープンイノベーションの重要性が国を挙げて叫ばれている。
このような背景のなか、大手企業側はベンチャーに対し発想とスピード感を期待して、協業するという傾向がある。しかし、いざ企画が走り出すと互いのスピード感が合わず、結果的にはベンチャーが大手に振り回される形で終わってしまう”無駄な協業”も多いという。大企業とベンチャーがうまく「つながる」にはそれぞれがどう在るべきか。また、ベンチャー企業が担うべき役割について、IoT推進ラボ合同イベント「Connected Industries」シンポジウムでベンチャー関連有識者の話を聞いてきた。
失われつつある“大企業”であることの優位性
シンポジウムでは、IoT推進ラボ座長 富山和彦氏(以下、富山氏)がモデレーターを務め、 カブク代表取締役CEO 稲田雅彦氏、Cerevo代表取締役 岩佐琢磨氏(以下、岩佐氏)、シェアリングエコノミー協会 代表理事 上田祐司氏(以下、上田氏)、ABBALab代表取締役/さくらインターネット・フェロー/京都造形芸術大学教授 小笠原治氏(以下、小笠原氏)、日本ベンチャーキャピタル協会会長 仮屋薗聡一氏(以下、仮屋薗氏)の5名がパネリストとして参加した。
「技術が進んだ今の世の中、従来と違って大きな土地やインフラを自分で持たなくても、クラウド上で自宅からでも開発ができる世界になった。それによって大企業がもってきた“大きい”という優位性は薄れつつある。むしろ変化適応能力でいえば小さいほうが有利に働く」(富山氏)
日本ベンチャーキャピタル協会会長の仮屋薗氏は、大企業とベンチャー企業の関係性について、ベンチャー側が「どういう大企業の資源を使えば、自分たちの技術によって世界を変えられるのか」を考え、大企業側との理解をもう一段深めていくことが大切だという。
「それは顧客基盤だったり、ブランドだったり、グローバルなネットワークだったりと形はさまざま。互いの理解を深めた上で、ベンチャーと大企業の分野をまたいだオープンイノベーションが行なわれることが、日本を変えていく力になるのでは」(仮屋薗氏)