――HMIについて、他社との協業はありますか。
大野 先ほど、30モデル以上の自動車に我々のソリューションが採用されていることをお話ししましたが、その中でもHMIがかなりの要素として入っています。採用もこれからどんどん加速すると見ているので、HMIの分野においても、ティア1メーカーなどとも協業を結びながら取り組んでいきます。
付け加えると、新しい機能が追加されると、新しいECUが追加されるというところがあります。先ほどのヘッドアップディスプレイもそうですし、メータークラスターのシステムもそうです。たとえばフロントのカメラ、リアカメラ、そういったものが付いてくると、それにそれぞれのECUが追加されます。
今後システムの統合化が進んでいくと、仮想化環境の上で、ソフトウエアベースでいくつもの機能を動かしていくという時代が近いうちにやってくると思っています。仮想化技術を応用して統合化を行うというのは、まさに我々がデータセンターで培ってきた知見でもあるので、そういったことを生かしながら、どんどん技術を発展していきたいと考えています。
――HMIも共通化されていくのですか。
大野 ただ、ここに向けて、共通のプラットフォームのようなものを提供していこうというのは、今のところは考えていません。なぜかというと、自動車メーカーやティア1メーカーにとっては、HMIが差別化の大きな要素の1つだからです。そこを共通化することに、あまりメリットはありません。
とはいえ、例えば自動運転のような先進技術は、共通化できるところ、または共通化しなければいけないところというのは、これからどんどん出てくるでしょう。そうしたときに、業界関係者を集めて、先ほどのエコシステムのようなものを構築していくことが、自動車業界のさらなる進化を支える1つの流れなのかと感じています。
来たるべき未来の自動車向けのビジネス戦略
――今、自動運転のお話がありましたが、インテルとしての自動運転向けの取り組みを聞かせてください。
大野 インテルはご存じの通り、PCの会社です。ただ、今後はクラウドや、そこに接続されていく各種のIoTデバイスのソリューション、またテクノロジーを提供していく会社に変わろうとしています。
私たちは、2025年までに、こういったクラウドに接続されるデバイスが800億個を超えていくと予想しています。それだけのデバイスが接続されていくと、従来のテクノロジーで推し進めていくのは難しくなります。そうすると、デバイスの分野においても、クラウドの分野においても、技術革新がカギを握ると考えています。
では、なぜPCの会社である我々が自動運転に取り組むのかというところですが、我々の予測では、自動運転が実現されると、1日1台あたり4TBの情報量を生み出すと見ております。一般的なインターネットユーザーが生成するデータ量は1日あたり1.5GBと言われていますので、その約2500倍以上のデータを生み出すことになります。
こういった大量のデータを処理するためには、クラウド側、もしくは車両側にかなり高度なコンピューティング技術が必要になってきますし、遅延のない通信技術が大事になってきます。私どもは、ストレージやデータセンターなど、IoTデバイスにいろいろなテクノロジーを持っていますので、とりわけこの自動車に関しては、非常に重要な基幹な技術になるのではないかと期待しています。
つまり、このエッジである自動車と、データを処理するクラウドやデータセンター、そしてその間をつなぐ通信技術を持つインテルだからこそ、自動車業界の進化を支えることができると考えています。