サプライチェーン強化のポイント

 では、サプライチェーン強化はどのように進めたらよいのであろうか。冒頭のコロナ対応の振り返りを踏まえ、特に供給安定性確保の観点から、ポイントを以下の3点に絞って解説する。

■ポイント1:重点品の選定する
 1つ目のポイントは、重点品を選定することである。会社として社会への供給に欠かせない重点製品を選定し、その製品の構成部材をリスク状況把握の対象とする。リスク対応策は前述の通り、調達複線化、在庫対応、代替品対応が基本なので、これらの対応をとることが難しいと考えられるものから優先的に検討を進める。重点品は2次以降のサプライヤーまでさかのぼって実態を把握する。

■ポイント2:供給リスクの評価をする
 2つ目のポイントは、重点品に対するリスク評価である。評価に当たっては、調達環境の分析も踏まえることが重要である。特に現下の状況では、コロナ禍以前から顕在化してきた米中対立がより激しさを増してきた。現在、特定国への依存度が大きいサプライチェーンの在り方への反省や国内回帰論も出ており、日本国内回帰に関しては政府も予算をつけるなど、後押しする体制がある。

 だが、日本は人口減少傾向にあるため長期的には市場の縮小がほぼ間違いないと見込まれ、各社のグローバルビジネスの構成などによっても状況は異なるが、一概に国内回帰一辺倒になるとは考えにくい。自社の事業戦略の方向性を踏まえながら、調達戦略の方向性を見極め、リスク評価を行うことが重要である。

■ポイント3:対応策を検討して取り組みマスタープランを立案する
 3つ目のポイントは、リスク評価結果に基づいた具体的な対応策の検討と、取り組みに対するマスタープランの立案、推進である。対応策の検討にあたって、まずはリスク対応の基本的な考え方を確認しておきたい。

 リスク対応には大きく4つの方向がある。
1.回避:リスクの根源となるものを使用・活用をしないことで、リスク自体を元から絶つ方法である。高リスク部材の採用抑制や低リスク部材への変更、代替サプライヤーへの変更を行う。

2.低減:リスクを小さくするために適切な対策を行うことである。調達複線化、安全在庫基準の見直しなどの在庫保有化、BCP策定、サプライヤーの改善支援などが施策となる。

3.転嫁:リスクを第三者に引き受けてもらう方法である。保険を掛け、リスク対応策を契約に織り込むことなどが具体策である。

4.許容:リスク発生しても被害が小さい、もしくは限定的と判断ができる場合に、そのリスク発生後に対応するという考え方である。

 以上のように、調達の供給リスクに対しては、回避→低減→転嫁の順で対応策を検討することが重要である。

 さらに、対応策の検討に当たっては、サプライチェーンを強化目標の設定が重要である。サプライチェーン強化のための具体的な対策方向は、「サプライヤーを減じる集約化」「新規サプライヤーの探索」「既存サプライヤーとの協働改善」の3つが基本策だが、当該カテゴリーの置かれている調達環境・期限・水準という目標の要素が明確になると、現実的に取り得る施策の方向は絞られてくるのが一般的である。その中で最も有効な方向の施策を具体化し、その実行計画を策定する。

 このような推進体制を確立するためには、リスクに備えた日頃からの対策と、目的・目標についてしっかりした共通認識を持つことが必須となる。

コンサルタント 加賀美行彦(かがみ ゆきひこ)

生産コンサルティング事業本部グローバル・調達革新センター長
シニア・コンサルタント

開発・調達・生産管理・生産・生技/工務の領域において、直接材・設備・間接材のトータルコストリダクションやコストマネジメントの仕組み構築、また機能強化に向けた技術力向上、人材育成などの中長期的な体質強化に関するコンサルティングを行っている。米国、欧州各国、ロシア、トルコ、中国、韓国、タイ、シンガポール等、海外での経験も豊富。2007年度に立ち上がったJMA主催の購買・調達資格(CPP)の企画委員として参画。