写真提供:(左)Jakub Porzycki/NurPhoto/共同通信イメージズ、(右)Sven Hoppe/dpa、クレジット:DPA/共同通信イメージズ
「ものづくり大国」として生産方式に磨きをかけてきた結果、日本が苦手になってしまった「価値の創造」をどう強化していけばよいのか。本連載では、『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』の著者であり、故・糸川英夫博士から直に10年以上学んだ田中猪夫氏が、価値創造の仕組みと実践法について余すところなく解説する。
最終回は、米ゼネラルエレクトリック(GE)と米国の株式市場をリードするマグニフィセントセブンの経営モデルを対比し、日本企業がプロダクトを中心に、再び価値創造を実現するための道筋を探る。
ジャック・ウェルチが断ち切った価値創造の回路
「Mission(価値創造の使命の明確化)」「Combination(使命を軸に要素技術を組み合わせる)」「Experiment(最適な組み合わせ段階的に試す)」という3つの枠組みからなるプロダクトマネジメント手法である「MCEモデル」。この価値創造システムを、いかに自社のビジネスに組み込むか。最終回ではこの点にフォーカスしてみよう。
日本企業の閉塞感の本質は、GEのジャック・ウェルチ型経営モデルとマグニフィセントセブン型経営モデルを比較すると俯瞰的に理解できる。マグニフィセントセブンとは、米国株式市場をけん引する主要ハイテク企業の総称で、アルファベット(グーグルの親会社)、アップル、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社を指す。
20世紀後半のGEは、ウェルチ時代に確立した「事業部制+選択と集中」モデルで経営の模範とされた。各事業が独立採算を持ち、トップは事業配分の最適化で企業価値を最大化する。このモデルは安定成長期の効率化には強かったが、「プロダクト」のイノベーションではなく「事業ポートフォリオ」の最適化に依存していた。
重要なのは、プロダクトと事業ポートフォリオの違いである。ここでいうプロダクトとは、顧客に価値を届けるためのシステムそのものを指す。一方、事業ポートフォリオとは、企業が持つ経営資源(ヒト・モノ・カネ、知的資産)を、事業単位を通じてどのように配分・回収するかという資本配分モデルである
2000年代以降、GEは金融部門への依存を深め、リーマンショックで金融事業が崩壊すると、技術と創造の象徴としてのGEブランドも失った。つまり、プロダクトイノベーションに根ざす価値創造の回路を断ってしまったのである。







