揺れる電車のつり革のように、組織もまた、一度動き出した流れを止め、進行方向を変えるのは難しい。(画像提供:Sang Low PS/Shutterstock )
「デジタル化するか、さもなくば死か」。現代マーケティングの父、フィリップ・コトラーの言葉の重みは、多くの経営者やマーケティング担当者が既に痛感しているはずです。しかし、現実はどうでしょうか。高価なデジタルツールを導入したものの、結局、従来の勘と経験に頼ったマーケティングに逆戻りしてしまう。このような事例は枚挙にいとまがありません。
なぜ、頭では「変わらなければならない」と分かっているのに、組織は変われないのでしょうか。多くの企業で直面するのは、個人のやる気やスキルの問題以前に、組織そのものが抱える構造的な病理です。今回は、マーケティングDXを阻むこの病理の原因を、「3つの壁」として整理し、その事例の分析から解決の処方箋を探っていきます。
マーケティングDXを阻む「3つの壁」
・第1の壁:組織の慣性(オーガニゼーショナルイナーシア)
最初の壁は、マイケル・T・ハナンやジョン・H・フリーマンらの社会学者がいう、「組織の慣性」と呼ばれるものです。物理学で「止まっている物体は止まり続けようとし、動いている物体は動き続けようとする」、慣性の法則があるように、組織にも「現状の状態を維持しようとする強力な力」が働きます。最適化された大きな組織は、巨大なタンカーが急にかじを切れないのと同様に、この「慣性」の力が強く働き、デジタルシフトへのかじ取りを遅らせてしまうのです。






