変化の激しい時代に、リーダーに本当に必要な力とは何か? コダックの破綻が示したのは、技術ではなく「学習の停止」が組織をむしばむという現実だ。こうした課題に対し、『ミネルバ式最先端リーダーシップ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で「適応型リーダーシップ」を提唱したのが黒川公晴氏である。過去の正解を問い直し、変化を学び続けるための姿勢とは?

内側からむしばまれたコダック帝国

『ミネルバ式最先端リーダーシップ』(黒川公晴著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 1970年代、イーストマン・コダック(コダック)は世界の写真文化そのものを象徴していた。同社は、フィルム、カメラ、印画紙、現像システムなどその全てを垂直統合した黄金モデルを築き、1976 年には米国内のフィルム市場の90%、カメラの売り上げの85%を占めるようになっていた。

 当時のコダックは業界における圧倒的ナンバーワンであり、技術力と市場への展開スピードが優れていたため、有力な競合他社が現れることはなかった。写真に残すべき特別な瞬間を表す広告フレーズ「コダックモーメント」は広く人々に浸透し、「幸せな思い出を記録する企業」というイメージが同社と強く結び付いていた時代だ。

 ところが、1990年代後半からその帝国は急速に揺らぎ始める。それは言うまでもなく、デジタル化の影響だ。