
Match the Hatch!
グランピングは、そもそもヨーロッパ貴族がアフリカなどで、狩猟や探検を楽しみつつも、拠点は自宅のごとくに快適にしたい、というわがままな願いを叶えた「グラマラス・キャンピング」を起源としているという。
そういう意味では、フェーリエンドルフ、特にWilderness Philosopherはグランピング的な施設だ。というのも、ここはアウトドアアクティビティ、特にフライフィッシングの拠点としてうってつけなのだ。
Wilderness Philosopherの2階への階段に書かれた「MATCH THE HATCH」は水面にいる虫を模したフライを使い、魚の捕食行動に合わせる、つまりフライフィッシングそのものを指すような言葉
フライフィッシングと他の釣りとの大きな違いは、その地で魚たちが普段捕食する虫にそっくりなフライ(疑似餌)を操ること。自らつくったフライに魚が食いつくか? 自然に溶け込み、魚との知恵比べ、いや、魚との対話をフライフィッシャーたちは楽しむ。
魚を傷つけず、釣れたらリリースするのもフライフィッシングの基本。狩りではないのだ
すでにフェーリエンドルフをよく知っていて、今回は清水さんが一緒にフライフィッシングをやろうと誘ったことで来てくれたRISAさんだけれど、おふたりってどういうご関係ですか?

「清水さんがフライフィッシング好きで、私がYouTubeで活動をはじめてからしばらくして連絡をくれたんです。共通の知り合いも何人もいまして、それ以来、私がFIELDSTYLEに行ったり、清水さんが北海道に来た時に釣りに行ったり……」
RISAさんのYouTube動画は北海道の大自然を満喫するほんわかした雰囲気が魅力だけれど、直接会ってみるとすごくしっかりした人物。なんでフライフィッシングをはじめたんですか?

「子どもの頃からアウトドアの遊びが好きで、時間に余裕ができたのをきっかけに経験がないことをしようとおもったんです」
と趣味として、独学でフライフィッシングを学んで、ひとりでスタートしたのだそう。
YouTubeに動画投稿したのは2020年6月28日が最初。このとき「この春からフライフィッシングをはじめた」と自己申告しているのだけれど、これは事実だという。
もはやベテランといった雰囲気のRISAさんがフライフィッシングの先生役もしてくれた。ちなみに手前の宮本さんが装備しているフライフィッシング関係の道具はフェーリエンドルフにてレンタルしたもの
「自分の成長日記として動画を公開して、フライフィッシングをやっているうちに、だんだん、仲間が増えていったんです。YouTubeで見てくださって、DMをもらって、色々な業種の人と知り合えました。目立ったみたい」
とはいえ、誰も見ないような動画ならばやっても意味がない。フライフィッシングならば、ライバルが少ないのでは?というところはしっかり考えたという。
御当地グルメレポートも動画の定番。こちらは道の駅 なかさつないの「千サルバトーレ12」による中札内田舎どりを使用したお弁当
いまではすっかり相棒の「えだまめ号」はそれから約1年後、2021年8月21日に登場。その頃のチャンネル登録者数はおよそ1万人だった。RISAさんは、その時点まで運転免許を持っておらず、合宿で免許をとり、人生ではじめて買ったクルマが中古の日産バネットバン。1999年から2016年まで販売されていた4代目モデルでパートタイム4輪駆動仕様だ。
オフロードでもなかなかタフな「えだまめ号」
車中泊もできるフライフィッシング用のクルマとして自分で手を加えていくのだけれど、9月という比較的早いタイミングで白いボディを自力でリペイント。緑系統のクルマにしたいと考えていたそうで、たまたま選んだ色が「グリーンソイビーンズ」という名前だったので「えだまめ号」となった。このえだまめ号カスタマイズ動画もヒットして、以降、クルマと釣りを中心に、RISAさんのチャンネルは成長していく。
ニジマス柄の天井にはロッドを格納できる。簡易テーブルつきで車内で動画編集することもあるという
「想定以上の視聴回数だった」とRISAさんはこのチャンネル立ち上げからの1年を振り返る。この結果、いわゆる案件と呼ばれる企業とのタイアップも増え、いまや立派なYouTuber。しかし動画もクルマも、スタート時からずっと手づくり体制だ。仕事の一部を外注できないかと試したこともあったそうなのだけれど「RISA RISE /りさらいず」らしさはRISAさんが一番、出せるという結果に。動画で言えば、出演はもちろん編集もRISAさんがすべて担当。撮影などで人手が必要な場合も最小限の気心の知れたスタッフでこじんまりと行い、足りない分は時間をかけることで補う。撮影も編集も何度もやりなおし、自分が納得できるものになるまで公開はしない、という。

ちなみに案件ってどうやってくるんですか? とたずねると
「SNSのDMがほとんどです」
とのこと。2024年からは「羅臼漁業協同組合のSNS大使」になっている。四季折々の海産物、秋鮭、ウニ、昆布……の紹介、実際に漁にも同行する。
「羅臼は大きくて立派な漁港で漁協も大きいのですが、やっぱり働き手が少ないという課題もあるんです」
とのこと。羅臼漁協では道内、道外問わず、漁に興味のある人募集中。
RISAさんはほかの地域、自治体のPRなどでも声もかかっているけれど、今後の夢をたずねると狩猟をやるとのこと。これまた独学で狩猟免許をとっているところなのだそうだ。
「ただ、肉を食べるんじゃなくて、ちゃんと理解したい、という気持ちがあるのと、地域貢献にもなるとおもうし、それに、そこでも仲間ができるんじゃないかっておもっているんです」
それが動画という形で表現されるかどうかは未定だけれど、きっとなんらかインフルエンシャルな存在になるのだろう。

