河井寬次郎 木彫面 1959(昭和34)年 河井寬次郎記念館蔵
河井寬次郎 文具一式(スタンドライト、硯屏、硯、筆筒、水滴) 河井寬次郎記念館蔵 5章「民藝と『個人作家』」より河井寬次郎は、後に民藝から距離をおき、木彫、エッセイと様々なジャンルの作品を創造した
民藝を食のブランディングに利用した京都
展覧会の会場へと視線を戻そう。展示の6章「民藝と京都」には、民藝の作家たちと、京都の旦那衆=パトロンたちとの関連が示される。特に、京都らしいのが、食と民藝の結びつきだ。
祇園の「十二段家」は、しゃぶしゃぶの発祥の地と言われ、建築は河井寬次郎に学んだ陶芸家・上田恒次が改装した。民藝同人はここでよく会合を開いた。
上田恒次 練上手大皿 1970-1980(昭和45−55)年
風格のある民藝建築の「十二段家」の内装
棟方志功 妙興の韻 1950−1955(昭和20年代後半)年 十二段家蔵
現在も使用される銅製の火鍋子(西垣光温のデザイン) 十二段家蔵
和菓子店の「鍵善良房」は、十二代目の今西善造が、まだ若かった黒田辰秋に店の大棚などの什器、くずきり用の螺鈿の器を注文。河井寬次郎とも交流し、作品も収集している。
黒田辰秋 螺鈿菓子重箱 1938(昭和13)年 鍵善良房蔵
黒田辰秋 螺鈿くずきり用器/岡持ち 1932年 鍵善良房蔵
京都 ブーランジェリー「進々堂」の創業者・続木斉は、1930年開店の進々堂 京大北門前のカフェの長机と長椅子を黒田に注文している。
黒田辰秋 朱漆三面鏡 1931(昭和6)年 日本民藝館蔵
黒田辰秋 屋久杉棚 1980(昭和55)年 京都市美術館蔵
洛北・木野の鰻屋「松乃鰻寮」は、上田恒次設計の民藝建築でおもてなしをする。
松乃鰻寮(旧松乃茶寮)一階応接室 写真提供:松乃鰻寮
どの店も、民藝作家をサポートしながら、それを店のブランディングに活かしている。
民藝理論に多くの信奉者がいた「教祖」のような柳の姿は、この展覧会では、十二段家でしゃぶしゃぶを、「鍵善良房」で、くずきりを食べている写真の中に和やかに登場する。
上:十二段家で「火鍋子(ホーコーツ)」のしゃぶしゃぶを食べる柳宗悦と河井寬次郎ら。モンゴル風の羊の水だきから発案された。下:「鍵善良房」でくずきりを食べる柳宗悦ら
両店とも、柳や民藝の支持者のようなアッパークラスの文化人だけではなく、地元の人や観光客で賑わう店だ。
民藝は京都で生まれ、食を彩り、庶民にも愛された。京都は、民藝のエッセンスをおいしくいただいた街だといえるだろう。
参考図書:『民芸 理論の崩壊と様式の誕生』出川直樹(新潮社)
京都市京セラ美術館
https://kyotocity-kyocera.museum/
特別展「民藝誕生100年─京都が紡いだ日常の美」
2025年9月13日(土)~12月7日(日)
前期 9月13日(土)~10月26日(日)
後期 10月28日(火)~12月7日(日)
京都民芸資料館では、秋季特別展 京都と民藝 を開催中
https://kyomingei.exblog.jp/#google_vignette
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2025年9月13日(土)~12月7日(日)
前期 9月13日(土)~10月26日(日)
後期 10月28日(火)~12月7日(日)
京都民芸資料館では、秋季特別展 京都と民藝 を開催中
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