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 小売とメーカーのつなぎ役の食品卸業界は、コロナ前まで経常利益率1%以下が当然という「薄利」な業界だったが、近年は異なる様相を呈している。物価高で価格転嫁が容易になり、利益を残せるようになってきているのだ。

 そんな中でも、各社によって「どう利益を確保していくか」という戦略は千差万別だ。流通業界の専門誌『激流』編集長の加藤大樹氏に、食品卸業界の現在地と収益力強化の戦略を聞いた。

物価高で「利益を残せるようになってきた」食品卸各社

──2024年度の食品卸業界の決算は、各社軒並み増収増益でした。好調の要因はどこにあるのでしょう。

【月刊激流】

1976年、製配販にまたがる流通業界の専門誌として創刊。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店など、小売業の経営戦略を中心に、流通業の今を徹底的に深掘り。メーカーや卸業界の動向、またEコマースなどIT分野の最前線も取り上げ、製配販の健全な発展に貢献する情報を届ける。

加藤大樹氏(以下、敬称略) やはりコロナ禍とロシア・ウクライナ戦争の影響で物価高が続き、小売各社も消費者も「値上げ」を受け入れるようになってきたことが大きいでしょう。

 2020年以前の食品卸業界は薄利で、経常利益率1%を超えることはまずありませんでした。30年続いたデフレで価格転嫁ができず、むしろ企業の中には売上目標を達成するために、無理に採算度外視で売り上げを獲得していくという姿勢のところもありました。

 ところがコロナ禍以降、値上げが徐々に小売・消費者に理解されるようになり、各社とも無理せず利益を残せるようになってきました。実際、日本アクセスや国分グループ本社、三菱食品といった大手企業も2024年度の決算では経常利益率1%を超えています。

 これまでの業界の常識とは異なり、無理に売り上げを取りにいくよりも「しっかり利益を残そう」とするスタイルが広がってきています。

 一方で、各社の利益拡大に向けた戦略は大きく異なっています。

──どのように異なるのでしょう。