コロンビア・ビジネススクール教授のデビッド・ロジャース氏(撮影:榊水麗)

「日本企業は変われない」──グローバル企業に対するDXコンサルティングを多数手掛けてきたコロンビア・ビジネススクール教授のデビッド・ロジャース氏は、伝統的な組織体制やリスク回避の文化が立ちふさがる日本企業のDX推進の現場で、そんな諦めの声を耳にするという。だが、そうした声に対してロジャース氏は、「日本企業だから変われないという認識は実は的外れだ」と指摘する。日本企業のDXを立ち止まらせている本当の原因とは何なのか、ロジャース氏に話を聞いた。

「日本企業だから」という枕詞は現実逃避

──ロジャース教授は、日本の大企業に対してもDXのコンサルティングを手掛けています。世界の大企業と比較したとき、日本企業特有の課題はありますか。

デビッド・ロジャース氏(以下、敬称略) 私はこれまで多くの日本企業の経営層や、DX責任者と対話してきました。

 彼ら・彼女らは一様に「私たちは老舗企業であり、組織を変革したくてもリスクを取ることができない」「トップダウンの意思決定・組織管理を変えるのは難しい。なぜなら私たちは“日本企業”だから」というようなセリフを口にします。

 こうした課題を耳にするたび、私は「それはあなたたちが“日本企業”だから抱えている問題ではないですよ。どの国のどんな伝統的な大企業も共通して、同じような悩みを持っています」と答えています。

 つまり、DXを阻む組織文化──リスクを回避する文化や組織の硬直化、意思決定の遅さ、部門間の風通しの悪さ──は程度の差こそあれ、大企業であれば世界中どこでも見られる課題なのです。