コロンビア・ビジネススクール教授のデビッド・ロジャース氏(撮影:榊水麗)

 DXの7割は失敗する──。こう言い切るのは、ビジネスリーダーの指導やグローバル企業のコンサルティングを多数手掛けてきたコロンビア・ビジネススクール教授のデビッド・ロジャース氏だ。同氏によると、成功する企業は企業変革こそがDXの本当の目的であると理解し、5つの「DXロードマップ」を遵守しているという。DXの本質と成功法則をロジャース氏に聞いた。

DXの7割が「失敗」してしまうワケ

──ロジャース教授はこれまで、大企業へのDXに関するコンサルティングを数々手掛けてきました。その結果、「70%のDXは失敗に終わる」という結論が導き出されたそうですが、これはなぜでしょうか。

デビッド・ロジャース氏(以下、敬称略) まずDXにおける「失敗」とは何か、定義を明確にしましょう。それは「投入した資本に見合う成果が得られたか」という問いに対して「得られなかった」と判断された場合を指します。

 つまり「何年も継続して全社的にDXを推進したけど“割に合わなかった”」と考えられている事例が、実に7割に上るのです。これは日本企業だけでなく、世界中の企業で同様の傾向が見られます。

――なぜDXは失敗してしまうのでしょうか。

ロジャース 最大の理由は「DXの目的」を定義していないからです。DXを通してどんな価値を顧客に届けたいのか、DXでどんな企業に生まれ変わりたいのか──こうしたビジョンなしに、いたずらにDXに取り組んでも、思ったような成果は得られません。