時計業界を席巻するヴィンテージダイバーズに、新たな進化の波が押し寄せている。そのひとつ、オリスが発表した「ダイバーズ65クロノグラフ」は、1960年代の古き良き雰囲気にクロノグラフ機能を融合させた意欲作だ。本格的なダイバーズウォッチの定石である黒文字盤を手放し、グレー文字盤とグリーンの色彩を巧みに取り入れた軽やかなデザインが特徴で、日常使いを重視した新たなアプローチを示している。68万円台からという価格で、ヴィンテージダイバーズとクロノグラフの融合という新機軸を体現する一本として注目を集めている。

クロノグラフ機能がもたらす新次元

ヴィンテージダイバーズのリバイバル熱は、もはや単なるトレンドを超えた存在となっている。1960年代のクラシカルなデザインと現代技術の融合は、すでに確固たる魅力として定着した。そして今、このジャンルに新たなトレンドを示すのが、クロノグラフ機能を付加したモデルである。

機械式腕時計が実用品として飛躍的な発展を遂げた1960年代前後。まだクオーツ技術が生まれておらず、人々は精密機械である機械式時計に絶対的な信頼を寄せていた。ダイビングという極限状況においても、頼れるのは手首に巻かれた時計だけ。そんな時代のロマンと実用性に、さらなる機能性を加えたのが、このクロノグラフ搭載モデルなのである。

オリスの「ダイバーズ65クロノグラフ」が示すのは、単なる機能追加ではない。防水性能に精密な時間計測機能を組み合わせることで、実用性を一歩押し進めた進化系ダイバーズの姿である。3時位置の30分積算計と9時位置のスモールセコンドが描く横2つ目のレイアウトは、1960年代のクロノグラフに見られるクラシカルな美意識を現代に蘇らせている。

ケースバックはねじ込み式。ブランドロゴが刻印されている

黒文字盤の定石を覆す軽やかなデザイン

このモデルが従来のヴィンテージダイバーズと一線を画すのは、その軽やかで洗練された雰囲気である。通常、ダイバーズウォッチといえば視認性を最優先とした黒文字盤が定石だが、この新作はサンレイ仕上げのシルバーグレー文字盤を採用している。100m防水という日常使いに適した仕様に合わせ、極度な視認性よりも洗練されたデザイン性を重視したアプローチと言えよう。

さらに注目すべきは、ダークグリーンのアルミニウムベゼルインサートと、オークグリーンに塗装された積算計の絶妙な色彩バランスである。一見モノトーンでありながら、オリスの本拠地ヘルシュタインの豊かな自然から着想を得たこのグリーンが、さりげない個性を演出している。派手すぎず、しかし確実に存在感を放つこの色合いは、ビジネスシーンでも浮くことなく、着用者の個性を静かに主張する。まさに大人のファッションアイテムとしての品格を備えた仕上がりである。

40mmという大きすぎないケースサイズも、エレガンスを優先したデザインアプローチの表れだ。従来のヴィンテージダイバーズが時として重厚な印象を与えがちな中、このモデルはもっと洗練された雰囲気を纏っている。左右対称のインダイヤルが文字盤に生み出す美しさは、まさに時計デザインの王道と呼ぶにふさわしい。

チェルボボランテ製のブラック鹿革レザーストラップと、ステンレススチール製ブレスレットという2つの選択肢が用意され、着用者のライフスタイルに合わせた柔軟性を提供しているところも評価できる。レザーストラップモデルは680,900円、ブレスレットモデルは715,000円という価格設定で、クロノグラフ機能を備えたヴィンテージダイバーズとしての完成度の高さを誇る。

ヴィンテージダイバーズの次なる形としてフォーカスされたクロノグラフモデル。黒文字盤の定石を手放し、軽やかなデザインで日常使いに特化したこのアプローチは、時計が持つ本来の魅力──精密さと美しさ、実用性とロマン──を現代的に再解釈した結果と言えそうだ。

Ref: 01 771 7791 4051-07 6 20 01、自動巻き、62時間パワーリザーブ、スステンレススチールケース(径40mm)。チェルボボランテ製ブラック鹿革レザーストラップ、10気圧防水。68万900円
Ref: 01 771 7791 4051-07 8 20 18、自動巻き、62時間パワーリザーブ、ケース(径40mm)とブレスレットはスステンレススチール。10気圧防水。71万5000円