「人」と「魚」という知覚的イメージの組み合わせにより「マーメイド」は生まれた写真提供:gowithstock/shutterstock.com
「ものづくり大国」として生産方式に磨きをかけてきた結果、日本が苦手になってしまった「価値の創造」をどう強化していけばよいのか。本連載では、『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』の著者であり、故・糸川英夫博士から直に10年以上学んだ田中猪夫氏が、価値創造の仕組みと実践法について余すところなく解説する。
創造性を社会的価値へと発展させる鍵は、MCE(Mission、Combination、Experiment)モデルの3つの枠組みにある。その理論と脳科学的背景とは?
創造性とイノベーションの関係
ニード志向の価値創造システムである「創造性組織工学(Creative Organized Technology)」を理論化した「MCEモデル」は、価値創造の使命を明確にする「Mission」、その使命を羅針盤として、さまざまな手段の中から最適な組み合わせを見つけ出す「Combination」、そして見つけた手段を実際に試して検証する「Experiment」という3つのフレームワークで構成されている。
なぜこの3つに分かれているのか。また、Combinationフレームワークがなぜ創造性やイノベーションにつながるのか。
こうした手段の理論的背景を理解することで、手段が目的化してしまう事態を避け、本質的な価値創造の洞察を得ることができる。さらに、それは他の価値創造システムとの柔軟な組み合わせをより容易にし、自社独自のコアコンピタンス(競争力の源泉)としての価値創造マネジメントの構築にもつながっていく。
創造性とイノベーションの関係は、まるで2段式ロケットのように段階的に展開されていく。
- 1段目:全てのイノベーションは、誰かの創造性によって幕を開ける。新しいアイデアや独創的な発想が誕生する瞬間だ。
- 2段目:そのアイデアが社会に受け入れられ、価値あるものとして定着していく。ここでようやくイノベーションが成立し、さらなる創造性を刺激していく。
創造性とイノベーションは、このようにして循環を続ける。







